青酸カリを飲んで自殺

 立川署の刑事が、国分寺市のSの自宅を訪ねた。だが応対した母は、息子は不在であると言い張った。刑事は引き揚げたが、自宅にいたSはその晩、天井裏に隠されていた青酸カリを飲み自殺してしまうのである。

「三億円事件の犯人はS以外にありえない」

 事件から2週間後には、銀行員の証言をもとに、後々有名となる「モンタージュ」がつくられたが、このモンタージュはすでに死亡した逮捕歴のある男性の写真をほぼそのまま流用したお粗末なものだった。この写真が一人歩きしたおかげで、「顔が違う」という理由だけで多くの容疑者がマークを外された。

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警視庁が作成した3億円強奪事件の偽白バイなどの遺留品が書かれた手配書(写真:時事通信社)

「三億円事件の犯人はS以外にありえない」という捜査関係者は多かった。しかし、事件から4ヶ月後に捜査に加わった平塚八兵衛刑事は、Sを「シロ」と断定する。

「どこを探してもホシはいないよ。だって本ボシは死んだのだから」

 こう不満を口にする刑事もいた。平塚は、これまでの捜査をやり直す、いわゆる「ケツを洗う」捜査を行い、事件は単独犯であると断定した。

 それからさまざまな犯人像が推理された。