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危機的な状況で経営者がなすべき第一のことは

――捨てるというのは、大きな決断も含まれていたのではないですか。

高田 組織の問題、今でいう働き方改革、そういった人的な面にはある種の決断も必要でした。そして改革を進める中で、改善点がはっきりと見えて来ました。たとえば諫早という場所へのアクセスの問題は大きな課題です。改善はまだ道半ばですが、その他にもスポンサー収入、チケット、グッズ販売など一つ一つの課題に取り組み、なんとかJ1での運営に必要とされる年間予算30億円確保が見えて来ました。

クラブマスコットのヴィヴィくんは5月5日生まれ

――チームがなくなるかもしれない、そんな状況の中で、高田さんは選手たちのモチベーションをどう高めようと考えたのでしょうか。

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高田 シンプルですよ。「みなさんは試合に集中してください。練習に集中してください。経営は私が責任を持つから」と。まさに私が社長になったばかりの頃は、選手も監督も不安で一杯でした。給料も入らないかもしれないというような状態ですからね。ですから、私は言葉と姿勢で選手や監督と向き合い、安心してもらうことを優先に、いかに本来のプレーに集中してもらうかだけを考えました。

 

――クラブの社員はもちろん、選手や監督も一般企業で言えば社員と言い換えることができるでしょうか。

高田 そうですね。その意味ではどんな企業でも危機的な状況で経営者がなすべき第一のことは「いかに働きやすくするか」だと思います。クラブチームであれば、いかにプレーしやすい環境を作るか。それがパフォーマンスの最大化を生む土壌になるわけですから。

J1昇格「人生には不思議なことが起きるんだな」

――その甲斐もあって、昨シーズンは見事J1昇格を決めました。

高田 2017年11月11日。忘れもしません。カマタマーレ讃岐を諫早のホームスタジアムに迎え、2万2000人の観衆が固唾を呑む中での勝利でJ1に自動昇格が決定した。人生には不思議なことが起きるんだなって、呆然としましたね。私は何もやってないんです。選手と監督とサポーターが一体となって達成できたことです。

中央に高田社長。J1昇格の喜びを分かち合う 提供:V・ファーレン長崎

――目下、変え続けている環境というものはありますか?

高田 これは「ジャパネットホールディングス」も含めて体制を整えているところですが、食の部分ではタニタさんと組んでいて、選手たちが利用する諫早のクラブハウスには、栄養面に配慮したメニューが並ぶ「タニタ食堂」が入っています。やはり食はすべての生命線ですから。それからエアウィーヴさんと提携して睡眠のケアもしていて、選手は普段エアウィーヴのマットレスを使用しています。まだ出だしの施策ですので、こういった環境改革は完成まで10年くらいはかかるかな。と言いつつも、5年で、いや2年でやろうって、僕せっかちなんですよね。社員はみんなハラハラしているかもしれないですね(笑)。