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ジャパネットからJリーグへ 高田明社長が語る「倒産寸前のチームを復活させた一言」

V・ファーレン長崎 高田明社長が語る「クラブチーム経営と地方創生」#1

社長なのに選手につい言っちゃうこと

――クラブ経営を1年されて、サッカーの知識は経営者に必要と感じましたか? 

高田 どうでしょう、僕はマインドを重視する方ですので、あまり知識に頼ることはないですね。というか、そもそも知識と呼べるような専門性はありませんし。もちろん素人目線ながらも、試合を観ながら「何が相手チームと違うところなんだろう、うちのチームに不足しているものは何だろう」と見えてくることはありますよ。でも僕の場合、それは戦略的、技術的な方法論というよりも、情熱とかエネルギーみたいな精神論の方に向いています。勝敗を左右するのはマインドの面が大きく、そのモチベーションを高めるために経営者として何をすべきかと。

――選手たちのマインドをいかにいい状態にするか。

高田 そうなんですが、惜しかった試合の後、選手につい言っちゃうことがあるんですよ。「気力で向こうが勝っていた。今日の負けは、気力の差だ」って。社長がこんなこと言ったら、選手は怒りますよね(笑)。悔しさのあまりのことなので、どうか許して欲しいんですけど。

 

――サポーターのような熱の上がりようですね。

高田 いやまさに、選手のマインドだけでなく、サポーターの熱を上げることにも、経営者は一生懸命にならなくてはいけませんよね。選手の力が最大限発揮されるようになるのは、ファンの本気の応援あってこそですから。

試合で負けた時に「ごめんなさい」と言えるかどうか

――高田さんは試合ごとにツイッターでつぶやいて、ファンとのコミュニケーションを続けていますね。

高田 クラブを盛り上げるために何が大切かって、そこしかないんです。コミュニケーションです。僕は29年にわたってテレビやラジオの前に立ち続けて商品を売ってきましたが、同じことだなってつくづく思うんです。お客さんが何を求めているのか、何を感じるのか、我々は何のために商品を販売しているのか。正々道々(※クラブのグランドスローガン)と想いを伝えること、それがお客さんづくりであり、ファンづくりなんですよ。ですから選手や監督にも言っているんです。「いくら有名になっても特別じゃないよ」と。今日入ったパートのスタッフたちと同じ立ち位置で、選手も監督もファンと接していかないと本当の意味で一流になれないと思っているんです。

 

――そのファンづくりで一番大事なことって何だとお考えですか。

高田 試合で負けた時に「ごめんなさい」と言えることでしょうか。次も頑張るから応援してほしいとか、頑張ったけど大変だったと伝える心も、僕はこれから大事になってくると思います。もちろん、勝負ごとですから勝つに越したことはない。ただ、勝ち負けを超えた感動を伝えられるようなチームになれたらいいなと思っています。最近はちょっと勝てないゲームが多いから、こんなこと言ったら怒られてしまうのかもしれませんけどね。

――愛されるチームになるための秘策という気もします。

高田 選手もファンも、相手チームをリスペクトする気持ちを持てたら強いなって思います。8月11日に広島で「ピースマッチ」と名付けた試合を、サンフレッチェ広島としてきました。被爆地をホームタウンとする両チームの一戦です。残念ながら我がV・ファーレン長崎は負けてしまいましたが、勝ち負けとは別の、サッカーを通した「愛と平和と一生懸命」というメッセージをこれからも発信していきたいと思います。ゲームに一喜一憂するのもサッカーの魅力。同時にサッカーができること、観戦できることの喜びも伝えられるクラブにしていきたいと思っているんです。

#2へ続く)

 

写真=松井丈也 

たかた・あきら/1948年長崎県平戸市生まれ。大阪経済大学卒業後、機械製造メーカーへ就職し、通訳として海外駐在を経験。実家のカメラ店の支店経営を経て、1986年に独立し「株式会社たかた」を設立。1999年に「株式会社ジャパネットたかた」に社名変更。1990年のラジオショッピングを機にテレビ、紙媒体、インターネットなど通販事業を展開し、2015年、66歳で社長を退任。2017年、V・ファーレン長崎社長に就任。

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