「ジャパネットたかた」でおなじみ、同社創業者の高田明さんがJリーグのクラブチームV・ファーレン長崎の社長に就任して1年。長崎出身だからこその地方創生への想いを、本拠地のある諫早市で伺いました。(全2回の2回目/#1より続く)
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「地銀統合は自然な姿」発言の真意
――V・ファーレン長崎という地域密着のクラブチームを経営されている高田さんが先日、「地銀統合は自然な姿」とお話しされてニュースにもなっていました。地方経済を支える地銀は「再編時代」に入ったと言われて久しいですが、あらためてこの発言の真意をお聞かせいただけますか?
高田 言葉通りの意味で、難しい話ではありません。私たちの長崎県では今、親和銀行と十八銀行の統合の話が進んでいます。ところが、公正取引委員会がそれに待ったをかけている状態にあった。県内の融資の7割を占めてしまう状態になる恐れがあるため、という理由からです。しかし私はもう、地方銀行の統合は時代の流れだと思うんです。マイナス金利の時代となって、銀行にとってバブル時期のどんどん儲かる状況は遠い昔となりました。そんな中で、地銀の店舗は市内で隣り合っているような場合さえあり、それではお互い成り立っていかないでしょうと。それよりも両行のみなさんが長崎県の活性化を考えて統合しようとしているなら、それを信じて支援すべきだと思ったまでです。
――高田さんの地銀との関わりで有名なお話として、地元の飲み屋でたまたま出会った十八銀行の支店長に、翌日5億円の融資をしてもらったというエピソードがありますよね。
高田 弟とカウンターで飲んでいる時に、お店の人が「ちょっと紹介したい人がいるんだけど」って隣の人とつないでくれた。その方が十八銀行佐世保駅前支店の支店長さんで。当時の僕の会社はラジオショッピングを全国展開し始めた頃で、商品倉庫やコールセンターも拡充しなければならなかったし、とにかく新社屋が必要になっていたんです。その建設のための融資先を探していたので、「支店長、5億円ぐらい融資してもらえませんか?」って初対面なのにお願いしました。それで、翌朝その支店長さんを訪ねて行ったんです。すると支店長も、酒場では面食らいながらも僕が何をやっているかすぐに確認してくれたんでしょう。迅速に融資を判断してくださった。それでビルを建てることができたんです。おかげでラジオショッピングを始めた当初3億円だった年商は、ビルが建った年に43億円にまで達しました。
――そこは地銀ならではの地元同士の助け合いのようなものなんでしょうか。
高田 いや、出資という意味ではそれは都銀でも同じことだと思います。ただ、地銀には顧客との地縁が得てしてありますよね。特に地方の商店、中小企業にとっては何か困った時に相談できるのが地銀さんという存在なんじゃないですか。