キャリアウーマンのマイコさんが独身者限定アプリで出会った男。ふたりの将来をほのめかす男には、実は妻子がいた。貞操権侵害で訴訟を起こし「独身偽装被害者の会」を立ち上げると、続々と相談が――。(全2回の1回目/後編を読む

マイコさん(仮名)と博報堂勤務の30代男性

 ◆◆◆

「独身偽装」で命を絶った被害者もいる

 結婚9年目、なんとなく家庭を離れて非日常的な時間がほしかった。誰かとちょっと、恋愛ごっこのような関係を築けたら――。

ADVERTISEMENT

 これは、独身と偽って女性と交際し、慰謝料の支払いを命じられた既婚男性が裁判所に提出した陳述書の概要である。

 “独身偽装”。いま注目を集める社会問題だ。男性が既婚であることを隠して女性と交際し、後に訴訟に発展、性的な自己決定権(貞操権)を侵害したとして損害賠償を命じられるケースが相次いでいる。

 2024年6月にXアカウント「独身偽装被害者の会」を立ち上げた外資系企業勤務、マイコさん(仮名)も被害者のひとりだ。自身の裁判の情報などを発信するうちに、同様の被害に遭った女性たちから連絡が寄せられるようになり、これまでの相談件数は数百件。現在は10名ほどの有志と、会の運営にあたる。

 マイコさんが語る。

「心から信頼し、将来を考えていた相手から騙されていたと分かったことで、心身を病んでしまったり、中には命を絶った方もいます。訴えて損害賠償請求が認められても、支払いが命じられるのはわずか数十万円であることが多い。さらに被害者は『騙されるほうがおかしい』と非難され、不倫と同じ扱いをされることもある。社会の理解が追いついてないと思います」

「週刊文春」は、実際に独身偽装に遭った女性たちを取材。被害の実情に迫った。短期集中連載の第1回は、マイコさん自身のケースだ。

自分が騙されるとは思いもしなかった

 蛯原友里似の大きな瞳が印象的なマイコさん。現在は神奈川県在住だが、出身は関西で、小気味よい関西弁を話す。営業職の第一線で活躍して好成績を収め、成果給を含む高収入を得てきた。

 仕事への苛烈な熱情とストイックな姿勢は同僚から慕われながらも、ついたあだ名は漫画「鬼滅の刃」の主人公の宿敵から取られた「無惨(むざん)様」。不倫は絶対に許せないという倫理観を持っていた彼女は、自分が騙されるとは思いもしなかったという。

 23年6月。マイコさんは、1カ月前に大手の独身者限定マッチングアプリで知り合った男性と初めて居酒屋で顔を合わせた。