不器用な感じで、誠実そうだと思った
河合ユウキ(30代、仮名)と名乗る男性は、大手広告代理店の博報堂に勤めているという。やや細身ながら筋肉質な体躯に、細いフレームの眼鏡に太眉という風貌は、俳優の野間口徹を彷彿とさせる。
広告マンにしては朴訥とした雰囲気だったが、ビジネス系SNSで氏名を検索するとヒットがあり、河合の説明に矛盾はないことが分かった。
マイコさんは振り返る。
「彼は『地方から転職したばかり。激務で彼女もいない』と話していた。よく『イケメンでハイスペックな男性に引っかかったんだろう』と言われるのですが、彼はむしろ真逆で、不器用な感じ。だからこそ誠実そうだと思った。同じ関西育ちで、ノリもあいました」
マイコさんは2年前にがんを患い経過観察中。結婚には消極的だったが、軽薄な交際は避けたかった。見た目で選ぶ男性にマッチングされないよう、アプリのプロフィール写真の1枚目には、敢えて女性芸人の画像を掲示。プロフィール欄には〈既婚者・彼女持ちお断り〉とも記した。アプリ上で河合からアプローチがあった際も、釘を刺した。
〈私が最も嫌いとするのは都合の良い不倫相手にされること〉(マイコさん)
河合からも理解を示すようなこんな返事があった。
〈される側はメリットないですもんね〉
がんを打ち明けた彼女に「一緒に楽しく長く生きましょう」
こうしたやりとりを重ねた末の実際の面会でも印象がよかったことから、マイコさんは河合との交際をスタートさせた。
多い時には週に2、3回のデートを重ねたふたり。マイコさんから見た河合には、妻どころか他の女性の影すらなかった。
「土日に会うこともあったし、朝から晩まで、LINEがつながらない時間帯もない。日曜の昼に突然、片道2時間かけて会いに来たこともありました。お泊りも頻繁で、8月には大阪と横浜を3泊4日でめぐる旅行にも出かけました」(マイコさん)
交際後も、マイコさんは婚姻歴や子供の有無をLINEで尋ねたが、河合は、
〈びっくりするくらい何もないよ〉
と否定。次のデートの候補地を探すやりとりの中、マイコさんが自身の同僚に出くわす可能性に触れると、河合は、彼氏として紹介して良いと提案した。
将来をほのめかすメッセージもあった。旅行から間を置かずして、がんについて打ち明けた際、こんなLINEが届いたのだ。
〈一緒に楽しく長く生きましょう〉
結婚については葛藤もあったが、マイコさんは互いの将来について真剣に考えるようになっていた。
