裁判では、行仕さんが「一緒に育ててほしい。できないなら養育費を払ってほしい」と伝えていたことも明らかになった。しかし、話し合いはまとまらなかった。

海岸での話し合い そして、突き出されたナイフ

現場となった岩沼市の海岸

2025年4月、被告は行仕さんを車で迎えに行った。立ち寄ったコンビニの防犯カメラには、行仕さんの姿が映っていた。オレンジ色のカーディガン。白いスカート。ザクロミックスの飲み物とハイチュウを買っていた。それが、記録に残る生前最後の姿となった。

その後、2人は犯行現場となる海岸へ向かう。

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検察官「なぜ海岸だったのですか」
被告「街灯がなく、人通りが少ないと思ったからです」
検察官「その場所はいつ決めたのですか」
被告「数日前から決めていました」

車を防潮堤の近くに止め、2人は堤防の上に移動した。被告はナイフを右手に握り、背中に隠していたという。

車の中から続いていた妊娠についての話し合いは、被告によると、防波堤に移ってからは「10分も経っていない」という。

行仕さんが「ジムに報告する」「プロとしての活動を辞めさせる」と言った、その直後。

被告は、ナイフを突き出した。

「頭が真っ白で」犯行後の行動

最初の一突きはショルダーバッグに当たった。行仕さんは尻もちをつくように倒れた。
被告はその後の状況について「頭が真っ白で覚えていません」と述べた。

ただ、行仕さんの断末魔の悲鳴だけが被告の耳に残っていた。

解剖結果では、上半身には7か所の刺し傷。死因は失血死だった。
殺害後、遺体となった行仕さんの両手を持ち、引きずりながら砂浜へ下りたという。

遺体は波消しブロックの隙間に置かれた。
「見つからないように隠そうと思いました」と、被告は証言した。

初公判から被告人質問までの法廷で積み重ねられたのは、出会い、借金、妊娠、すれ違い、そして海岸での犯行に至るまでの断片だった。その断片を裁判所がどう受け止め、どんな判断を示したのか。
後編では、論告求刑公判と判決公判をたどる。

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