今年4月、大阪市立総合医療センター(大阪市都島区)に、国内で2例目となる「AYA(あや)世代専用病棟」が開設された。地域がん診療連携拠点病院で、かつ小児がん拠点病院に「AYA世代専用病棟」が設立されるのは全国で初の試みだ。成人と小児世代の狭間になりがちだった10代後半から30代のAYA世代がんの診療について、大きな期待が高まっている。
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「AYA世代」ってなに?
「AYA世代」は、英語の「思春期と若年成人(Adolescent and Young Adult)」の頭文字からつくられた言葉で、医療界では治療しながら進学や就職、恋愛、結婚など、さまざまな人生の転機を迎える10代後半から30代の人たちを指す。
現在、AYA世代のがん患者は全国に2万人以上いると推計されているが、医療機関も医療従事者もAYA世代に特化しているケースはほとんどなく、ケア環境の不足が課題となっていた。
たとえば入院の場合、小児病棟・高齢者の多い成人病棟のどちらに入っても、AYA世代のがん患者は同室の患者と環境も話も合わずに孤立しやすいという悩みがある。厚生労働省の発表によると、AYA世代のがん治療成績が改善しない背景には、AYA世代特有の心理・社会的要因も関係しているというアメリカの調査結果があるといい、AYA世代のがん対策にはそういった要因を考慮した対策が必要だといわれてきた。
千葉や福岡からも患者が治療に訪れる
そこで2018年4月、静岡がんセンターに次いで全国で2例目の、思春期から30代までの「AYA世代専用病棟」が大阪市立総合医療センターで開設された。西日本では初の試みで、大阪府内はもちろん、千葉や福岡などからもAYA世代の患者が治療に訪れている。
同病院の「AYA世代専用病棟」は、1病棟すべてがAYA専用の病棟と位置づけられている。通常の病棟45床に対して27床というゆったりした配置で、4つの有料個室のほか、4人部屋の病室、食堂、プレイルーム、面談室、学習室、読書スペースなどが設けられている。