プレイルームはただの「遊ぶための場所」ではない
プレイルームには、プレイステーションなどのテレビゲームやDVD、アイロンビーズ、レジン、ボードゲーム、漫画や雑誌のほか、ピアノやクラシックギターなどの楽器もあり、それぞれが思い思いに過ごせる空間となっている。
プレイルームはただの「遊ぶための場所」ではない。病気の重みや治療の苦痛などで孤独を感じやすいAYA世代のがん患者が、ここへ来てくつろいだり、同じ病気で入院している“同志”の姿を見たり、時には一緒に話したりすることで、気分転換ができるようにというスタッフの思いがつまった「癒しの空間」なのである。プレイルームにつけられた「Bright cafe」という名前は、長期の入院患者やその家族らの案によるもので、「ここを利用する人がみんな『輝く心』を持てるように」という期待と希望が込められている。
AYA世代が独りで抱えている悩み 引き出す難しさ
1病棟すべてを「AYA世代専用」とすることに、最初は不安の声も大きかったと原純一副院長(兼小児医療センター長)は話す。しかし、原副院長は「1病棟すべて」にこだわった。
「AYAでワンフロア(ベッドが)埋まるのかという心配の声があったのは事実です。でも、AYA世代専用病棟に入ってくるがん患者さんは一人ひとり症状が異なり、それぞれが異なるバックグラウンドを抱えている。そういった個々のニーズに対応できるようにするためには、やはりワンフロアすべてをAYA世代専用病棟にする必要があった。重層的に関わるスタッフ構成にも力を入れています」と原副院長は話す。
AYA世代専用病棟は、通常の病棟のように疾患で区別するのではなく、小児科と同じように「年齢」で区切っているため、あらゆるタイプのがん患者が集まる難しさがある。また、年齢的に15歳未満の小児に多くみられるがんと、成人に多く発生するがんのどちらも発生しうるため、小児血液腫瘍科と血液内科、腫瘍内科、放射線治療科など成人診療科との綿密な連携も必要とされる。
同病棟では、AYAサポートチーム、精神科リエゾンチーム、保育士、医療ソーシャルワーカーなどが患者の状態ごとに応じる体制を整えている。
さらに原副院長は、AYA世代は独りで悩みを抱えてしまいがちだが、その悩みが個々に違うので、引き出すのが難しいと指摘。そういった問題を解決するために、AYA世代の心の悩みや闇をほどく糸口をつかむ病棟専従スタッフとして、看護師のほか「子どものスペシャリスト」である保育士が活躍している。