ジュエ氏の華麗な銃さばきは、ロイヤルファミリーであることの証左と言える。北朝鮮では、市民による暴動の発生などを恐れ、銃器の扱いは厳重に制限されている。軍人を除く一般市民で銃を扱えるのは、国家の指示でイノシシなどの個体数を管理するハンターくらいだ。市民が野生動物を捕らえる場合は、罠を使うことがほとんどとされる。
例外は金正恩氏らのロイヤルファミリーと側近たちだ。
北朝鮮ではロイヤルファミリー専用の狩猟保護区も設置されている。金正日総書記は江戸時代の鷹狩りよろしく、週末になると、側近たちとノロジカや野鳥狩りを楽しんだ。13歳で早くも銃器に触れること自体、ロイヤルファミリーの証しだと言える。
金正恩氏の場合も、2009年に「青年大将」という名前で金正日総書記からの後継作業が始まった際、新たな指導者の横顔のひとつとして「銃の名手である」と一般市民向けの講演会で伝えられた。
「映像を撮り直すことがあった」
ただ、そうは言っても、簡単に銃を扱えるわけではないだろう。最高指導者が参加する一号行事は基本的に生中継を避ける。
暗殺を避ける目的もあるが、最高指導者が恥をかくような場面がないよう徹底的に編集するためでもある。
北朝鮮を逃れた朝鮮労働党元幹部は「会議では、最高指導者の演説の区切りごとに拍手し、入退場時には万歳などの声をかける。調子が合わないと、映像を撮り直すことがあった」と語る。
ジュエ氏の場合も、格好良く射撃できるまで、周囲の側近たちが根気よく付き合ったのかもしれない。