代官山は「変化の途上」にある

いまの代官山は、ガラガラでも廃墟化しているわけでもない。駅前の空きテナントは確かに存在する。だが代官山アドレスには子育て世代が集い、代官山T-SITEには国内外から人が訪れ、ログロード周辺では街歩きを楽しむ人の姿が絶えない。

問題は街全体の活力ではなく、その活力が「どこに」「誰に」向いているかだ。

かつて代官山は、全国から人を呼び込む消費の目的地だった。「ここでしか買えない」という特異点が、街の求心力だった。しかし今、街を支えているのは観光客ではなく、ここで暮らす住民たちだ。

ADVERTISEMENT

駅前の空洞化は、その移行期における歪みの表れだ。かつての来街者を前提とした商業モデルが限界を迎え、増加した新たな住民層の需要にまだ追いついていない――その狭間に空きテナントは生まれている。

フォレストゲートが体現する「どっちつかず」の違和感は、施設の失敗ではなく、街全体が抱える移行期の象徴だ。

代官山はまだ終わっていない。むしろ次の姿を模索している途中なのだ。駅前の空きテナントは、衰退の証拠ではなく、「来街者の街」から「住民の街」へと脱皮しようとする、その過程の痕跡である。その脱皮が完成したとき、駅前がどんな顔を持つのか――それが、代官山という街の次の問いになる。

杉浦 圭(すぎうら・けい)
街歩きライター
街歩きを趣味とし、全国各地を巡り歩いてその街ならではの魅力を発見することをライフワークとする。旅行メディアでライターとしても活動し、旅行者の視点を交えながら、街の魅力を多角的に伝えている。東洋経済オンラインや、現代ビジネス、ジモコロなどに寄稿している。
次のページ 写真ページはこちら