3月24日、衝撃的な事件があった。中国大使館(東京都港区)に刃物を持ち込んだ男が侵入したのだ。しかもその男の正体は――。

『中国大使館に陸自隊員侵入』(産経新聞3月25日)

 現役の幹部自衛官(23歳)だった。「中国大使に面会して意見を伝えるためだった」と容疑を認めている。

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Ⓒaflo/akiyoko74/イメージマート

日本側の「遺憾」表明では不十分だと批判

 この事件は「その後」の動きも重要だ。おさらいしてみよう。

 今回の事件が重く受け止められている理由は三つある。第一に、大使館は特別に守られるべき場所だからだ。外国の大使館の安全は、大使館が置かれている国(受け入れ国)の政府が守る責任を負うと「ウィーン条約」で定められている。第二に、侵入したのが現役の自衛官だったこと。そして第三に、刃物を持ち込んでいた点である。

 そして次がポイントだが、日本政府は個人の問題として整理しようとしているのに対し、中国側は国家の責任として説明を求めている。同じ事件でも、自国民に“見せている”風景が違うのである。

 つまり今回の事件は侵入そのものだけが問題なのではない。現在の日中関係の距離の遠さ、そして対話の難しさを映している点にもある。

 たとえば朝日新聞は事件の顛末をこう伝えている。

『中国大使館への自衛官侵入 「遺憾」にとどめる日本対応に強まる批判』(3月28日)

 記事によれば、日本政府内には「大事になるような性質の事件ではない」と問題を大きくしない雰囲気があるという。一方、「中国にとって良い政治カードとして使われる可能性がある」と警戒する声も伝える。これに対し中国外務省は、日本側の「遺憾」表明では不十分だと批判し、大使館の安全確保はウィーン条約上の義務だと指摘した。中国共産党系メディアも、日本が事件を個人の行為に矮小化していると論じている。