双方の言い分をどう考えればよいのだろうか。気になるのは、謝罪が中国に利用されるのを警戒するあまり、日本側が大使館の安全確保という本来の義務について十分な説明を避けているようにも見える点だ。その結果としてかえって中国側の批判を招き、この問題が「まんまと」政治カード化してしまっているのではないだろうか。
中国のSNSでは「日本の軍国主義復活の証しだ」と反発が…
同志社大の三牧聖子教授も、中国を警戒するあまり、国家として当然とるべき対応が見えなくなっているのではないかと指摘する(朝日新聞デジタル・コメントプラス)。大使館の安全確保はウィーン条約に基づく義務であり、「中国に付け入る隙を与えない」ことを優先する姿勢そのものが、日本の国際的立場を弱めかねないというのである。
下世話な表現で言うと「謝ったら死ぬ病」というのがあるが、条約に基づいた誠実な対応をとったほうが、むしろ「付け入る隙を与えない」ことになるのかもしれない。
しかし日刊ゲンダイには官邸周辺の声として、昨秋の高市早苗首相の台湾有事発言で中国は猛反発したが、国内世論は「中国に負けるな」と盛り上がったことを指し、
《いま謝罪してしまえば「高市さんは腰抜け」と支持者が離れてしまう恐れがある。「遺憾」「残念」と評価するにとどめるでしょう》
とあった。現在その通りの展開となっている。産経新聞は社説で中国の対日批判を警戒しつつ「中国側が事件について日本に抗議したのは当然だ」と書いている(3月29日)。
ここで懐かしい言葉を思い出したい。「戦略的互恵関係」である。お互いめんどくさい相手かもしれないが、共通利益を考えてボチボチやっていこう(大意)というものだ。
両国政府だけではなく、SNSでも互いの見解が飛び交っている。中国のSNSでは「現役の軍人が侵入するとは宣戦布告に等しい」「日本の軍国主義復活の証しだ」といった反発が広がっていると毎日新聞は伝えている。