粛清には明確な理由がある
今回の粛清の実際の理由は、世間でささやかれているような扇情的なものではありません。しかしアジアの平和と安定にとって、より重大な意味を持つ可能性があります。
一世代にわたる軍指導部が一掃されたことで、人民解放軍が混乱状態にあるとの見方もあります。それは、習主席が掲げる台湾との「祖国統一」という目標を後退させる兆しのようにも映ります。
しかし実際には、これは習主席が長期的に描く構想の一環です。人工知能やドローン、さらには宇宙・海中・サイバー空間といった新たな戦域を掌握できる、より規律ある新世代の将官へと世代交代を進めるための布石とみられます。
習主席の最終的な目標は、台湾を制圧し、さらに米国および日本を含むその同盟国との潜在的な対峙において優位に立てる軍事力を築くことにあります。
粛清された指揮官たちが、こうした野心そのものに異議を唱えていた証拠はありません。しかし習主席が、将来の戦いの土台として、絶対的な思想的一体性と自身への忠誠心を醸成しなければならないと考えていることが、次第に明らかになってきました。
その発想の背景には、若き日に身につけた毛沢東主義やスターリン主義の考え方があるとみられます。
党は張上将の解任を、「腐敗を除去し新たな血肉を再生させる」という至上命令の一環であり、人民解放軍の刷新と再生を実現するための措置だと位置づけています。
これは中国共産党において特別な意味を持つ符牒的な表現です。長征後の1930年代後半、疲弊した毛沢東率いる共産軍が中国北中部の延安に再結集した重要な時期を想起させる言い回しだからです。
※マット・ポッティンジャー氏の連載記事全文(3200字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています。全文では、以下の内容についてもお読みいただけます。
・最も戦略的忍耐力に富む指導者
・2028年の政治的空白期
