もったいない精神のドイツ事情

――森の生活は、「余すところなく使い切る」というスタンスでいらっしゃいますね。

小川 そうですね。もったいないことをするっていうのが自分の中では罪深いことなので、いかに無駄にしないか、ということを心掛けています。

――ドイツ・ベルリンでも生活されていましたが、そのもったいない精神は、そのときの影響もありますか?

ADVERTISEMENT

小川 はい。ベルリンではたとえば使わなくなったものがあったとしたら、自分の住んでいるアパートの前に段ボールとかに入れて「どうぞ」と置いておくと、またそれを必要とする人が持ち帰って使ったりしていました。日本でもときどき見かけますが。

 食器や子どもの小さくなった靴とか、大きなものだと家具までいろんなものが置いてあって。これ、本当に持っていく人いるのかな? と思って見ているんですけれども、意外と最後、きれいに全部なくなる。「よいしょよいしょ」と若者たちがトラム(路面電車)を使って自力で運んでいる姿を見ると、ただ捨てるのではなくてじゅんぐりに活用していくというのが、すごくいい文化だなと思います。

美しい森に囲まれた山小屋。静寂の中、風の音や鳥の声が聴こえてくる。撮影:榎本麻美

――もしかして「長く使う」ということが、住宅にも言えますか?

小川 日本の住宅の寿命はたしか平均およそ30年くらいで、それでまた建て替えていくわけですけど、私がベルリンに住んでいたアパートは築100年を超えていて、もちろん古いしガタがきているけど、水回りで問題が起きたら修理して住んでいました。

 ヨーロッパは日本ほど地震がないので壊れなかったり、石でもともと頑丈に作ってあるというのがあるんですけど、代々引き継いで長く暮らしていく文化が根付いていて、建ててわりと早い段階で取り壊されてしまう傾向のある日本の住宅事情とは違いますね。ですので、山小屋を建てるときは頑丈で長持ちする家を建てたいという希望がありました。

(3回目に続く)

星の王子さま (文春文庫 サ 9-1)

サン=テグジュペリ,倉橋 由美子

文藝春秋

2019年5月9日 発売

『星の王子さま』 *解説を小川糸さんが書かれています

最初から記事を読む 森への移住は決断の連続だった――作家・小川糸のとっておきの話