極道ならではの引退理由

「警察の徹底した取り締まりで、工藤会は飲食店からのみかじめ料や公共工事関係の利権をほとんど失い、幹部の逮捕も相次いで組織維持にも苦労する状態。民事訴訟では野村に1億円を超える賠償が命じられており、組としてはこれ以上面倒を見切れないというのが本音のようだ」

 かつては「工藤会との付き合いなしでは北九州で商売はできない」とまで言われていたが、資金源が次々に断たれ、ピーク時には1000人を超えていた構成員も現在は190人ほどにまで激減した。

機動隊員が警戒する中、特定危険指定暴力団の工藤会系組事務所へ家宅捜索に入る警視庁の捜査員ら ©時事通信社

 金銭的余裕を失ったばかりか、親分を最後まで支える意識も希薄化し「鉄の結束」が弱まっていたとの指摘も。野村自身も、高齢であることに加え、長期の勾留生活と裁判対応で弱気になっていたとの情報もある。

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「公判では本人が引退を口にすることもあったが、今回は事実上、組織から引導を渡され、従うしかなかったのだろう」(前出・捜査員)

工藤会が消滅するわけではない

 ただ、工藤会がこのまま消滅するかというと、そうではない。近年顕著なのが、関東への進出だ。

「千葉県内に拠点を構える二次団体の長谷川組が、若いトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)メンバーを使った特殊詐欺や恐喝のほか、飲食や不動産業などにも巧妙に入り込んでいる。かつての工藤会とは異なる手法で資金を獲得し、勢力を増している」(別の関係者)

 当局も福岡県外での活動について注視し、取り締まりを強化しているという。トップが退いてなお、“最恐”暴力団は形を変えていまも動き続けている。

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