2025年11月、排ガス規制の波に押され、50cc原付はその歴史に幕を下ろした。前編では「原チャリといえばこれ」という王道モデルやプレミアム化した名車を紹介したが、後編ではさらに深く掘り下げ、メーカーが本気で「ヤバい名車」を作っていたあの頃の狂熱を振り返る。

 

スポーツ・走り屋・ストリート系

 自主規制上限の「7.2馬力」に情熱を注ぎ、大排気量車をも凌駕する技術的熱狂が生んだ名車たちを紹介する。

ヤマハ:RZ50(初代・2代目)

ヤマハ:RZ50(初代)発売年:1981年 当時の新車価格:17万6,000円 スペック:7.2PS/9,000rpm
ヤマハ:RZ50(2代目)発売年:1998年 当時の新車価格:25万9,000円 スペック:7.2PS / 10,000rpm 最後の2スト本格スポーツとして需要が集中し、50万円以上の高値で推移している。

「水冷2ストの先駆者。優れた走行性能が特徴」

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 1981年に登場した初代RZ50は、それまで空冷エンジンが主流だった50ccクラスに水冷時代の到来を告げた。一度は生産終了したものの、1998年にクラシックなスタイルで復活。

 呉尾氏は「見た目はレトロだが、中身は最新技術で磨かれた高回転型エンジン。リミッターを外すのも比較的容易で、簡単に100km/hマシンに変貌した。2ストローク時代の最後を飾るにふさわしい、純粋なスポーツモデルだった」と語る。

スズキ:RG50Γ(ガンマ)

スズキ:RG50Γ(ガンマ)発売年:1982年 当時の新車価格:18万9,000円 スペック:7.2PS / 8,000rpm タマ数が激減しており、フルカウル付きの美車は応談価格になることも。写真は1984年モデル。
スズキ:RG50Γ(ガンマ)発売年:1990年 当時の新車価格:22万9,000円 スペック:7.2PS / 7,200rpm

「50ccで100km/h超え。ガンダムルックに秘めた驚愕のポテンシャル」

 80年代のバイクブームを象徴するスズキの傑作。水冷2ストエンジンから放たれるパワーは、50ccという枠を完全に超えていた。

「見た目は正直、カクカクしていて『ガンダムみたいでダサい』なんて言われてましたが、走らせたら化け物。本物志向のフルカウル、タコメーター、レーサー直系の足回りは、子供騙しのおもちゃではなかった」(呉尾氏)

ホンダ:NS-1

ホンダ:NS-1 発売年:1991年 当時の新車価格:27万9,000円 スペック:7.2PS / 10,000rpm 若者に酷使された個体が多い中、低走行車は当時の価格の倍以上の値がつく。

「原チャリの常識を覆すデカさ。メットインまで備えたフルサイズスポーツ」

 50ccスポーツといえば小さな車体を想像するが、NS-1は違った。前後に17インチの大径ホイールを採用し、パッと見は250ccクラスのバイクと見紛うほどの巨体を誇った。

「一番の驚きは、通常は燃料タンクである場所が実はヘルメット収納スペースだったこと。スポーツ走行性能と実用性をこれほど高い次元で両立させたモデルはありません」

ホンダ:MBX50/MB50

ホンダ:MBX50 発売年:1982年 当時の新車価格:18万6,000円 スペック:7.2PS / 8,500rpm 水冷2ストスポーツの黎明期を支えた名車。希少価値から30万円前後まで高騰中。
ホンダ:MB50 発売年:1979年 当時の新車価格:13万6,000円 スペック:7.0PS / 9,000rpm

「ホンダ初の水冷7.2馬力。誰にでも扱える速さの追求」

 空冷MB5の後継として登場したMBX50は、ホンダが初めて50ccスポーツに水冷エンジンを持ち込んだ記念碑的モデルだ。

 呉尾氏は「ライバルのガンマがピーキーな性格だったのに対し、MBXは中速トルクが太く、誰が乗っても速さを引き出せた。デザインも洗練されていて、このバランスの良さが後のホンダ50ccスポーツの伝統になっていきました」と指摘する。