「ぼけていく私」というタイトル

 これ、なかなかうまいタイトルだけど、やっぱり「ぼけていく私」っていうのは、きつい悲しい言葉ですね。ぼけていっていることを認識しないでぼけている人がいるでしょう。あれは楽でいいけども、私みたいに、ああもうだめだって思ってばかりっていうのもつらいですよ。ぼけているってことが、わかるから。

(このタイトルは)衰えと闘っているイメージなんですか。へー。闘っているというより、つぶやいている感じですね、自分としては。ぼけていくっていうのは現在形で、衰えていくことを認識している。そのやりきれなさを、本人は感じるわけですよ。だから、本人にしてみれば、一歩踏み出したタイトルですよね。

「ぼけているように見えない」と言っていただくけど、そうね、今日などはわりと機嫌がよかったからぼけていないんじゃないですか。体調もあるかもしれないですね。疲れてる時は、こうはいかない。でもそれよりも、お話の波長があったんですよ。いつもはその椅子に座って、あほうのように庭を見ているだけですから。

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構成 矢部万紀子

佐藤愛子(さとう・あいこ)
1923年大阪府生まれ。甲南高等女学校卒業。小説家の佐藤紅緑を父に、詩人のサトウハチローを異母兄に持つ。69年『戦いすんで日が暮れて』で第61回直木賞、79年『幸福の絵』で第18回女流文学賞、2000年、65歳から執筆を始めた佐藤家3代を描く『血脈』の完成により第48回菊池寛賞受賞。15年『晩鐘』で第25回紫式部文学賞を受賞。17年旭日小綬章を受章。

響子(きょうこ)
杉山響子 1960年生まれ。玉川大学文学部卒。両親の離婚後、母の佐藤愛子と暮らす。著書に『物の怪と龍神さんが教えてくれた大事なこと』『憤怒の人 母・佐藤愛子のカケラ』。

桃子(ももこ)
杉山桃子 1991年生まれ。立教大学文学部卒。「青乎(あお)」名義で、映像や音楽作家として活動する。著書に『佐藤愛子の孫は今日も振り回される』。

ぼけていく私

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文藝春秋

2026年4月9日 発売

次の記事に続く 母が法律だった……娘と孫が明かす「支配して愛した」佐藤愛子の子育てとは