2018年3月、滋賀県守山市の河川敷で、頭部や手足のない女性の遺体が発見された。遺体は近くに住む58歳の母親で、同居する娘・あかりが死体遺棄などの容疑で逮捕され、その後殺人罪でも起訴された。9年間浪人し医学部を目指していた娘と母の異常なほど密接な関係の裏に何があったのか。
2022年の刊行から累計22万部を突破した話題作、獄中の娘との書簡をもとに描いたノンフィクション『母という呪縛 娘という牢獄』(著=齊藤彩、講談社文庫)より一部を抜粋して紹介する。(全6回の2回目/3回目に続く)
◆◆◆
「お母さんに大恥かかせやがってえぇっ!」高校の三者面談で母親が激怒した理由
「はっきり言って、あかりさんのこの成績で医学部医学科は非常に厳しいです。志望校の再考をお勧めします」
三者面談で、模試のデータを見せながら担任は切り出した。
「ご覧ください。看護学科はA判定です。現役合格は間違いないでしょう」
「いや、でも、娘は……」
「あかりさんは」
あかりは息を潜め、担任をにらむように見つめていた。この面談が終わった後、母に何を言われるかわからない。黙れ、黙ってくれ!
「そもそも、医師を目指すのにふさわしくありません」
車に乗り込むと、案の定母は激昂した。
「何なのあの担任! あかちゃんが医者にふさわしくないって失礼なっ! たかが高校教師風情で舐めた口を利きやがって!」
空気がピリ、ピリと震え、フロントガラスが割れてしまいそうだ。
「そもそもあかちゃんがあんな恥さらしな成績しか取れなかったからでしょうがぁっ! バカタレがぁっ! お母さんに大恥かかせやがってえぇっ! ちゃんと勉強しろおぉっ!」
母の咆哮に耳が痛くなり、涙が出た。
〈世間一般の母親も、こうやって娘に接するのだろうか。成績が良くないと怒鳴ったり、手を上げたりするのだろうか。
生徒の学力は試験の得点で測られる。それ以上でもそれ以下でもないのだ。数字は噓をつかない。担任は事実に基づいて客観的な見解を述べているに過ぎないのに、なぜ母は受け入れないのだろう。担任に申し訳ない気持ちになる〉
