2018年3月、滋賀県守山市の河川敷で、頭部や手足のない女性の遺体が発見された。遺体は近くに住む58歳の母親で、同居する娘・あかりが死体遺棄などの容疑で逮捕され、その後殺人罪でも起訴された。9年間浪人し医学部を目指していた娘と母の異常なほど密接な関係の裏に何があったのか。
2022年の刊行から累計22万部を突破した話題作、獄中の娘との書簡をもとに描いたノンフィクション『母という呪縛 娘という牢獄』(著=齊藤彩、講談社文庫)より一部を抜粋して紹介する。(全6回の5回目/6回目に続く)
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初公判に臨み、弁護士の質問に答えた
2020年11月5日、あかりは控訴審の初公判に臨んだ。証言台に立ち、弁護側の杉本周平弁護士の質問に答えた。
──今回、あなたがお母さんを殺したことに間違いないですね。
「はい」
──お母さんはあなたを助産師にさせたがってましたね。
「はい」
──でもあなたとしては看護師として、できたら手術室の看護師になりたくて、そのまま医大病院に就職したかったんですね。
「はい」
──お母さんに、助産学校へは行かずに、看護師になりたいと言ったのはいつですか。
「私が大学の助産師コースに落ちてしまったときです」
──そのとき、お母さん、なんと言うたの。
「そういう約束、助産師になるという約束で看護学科に入れたわけやから、それは約束が違うから、だから、助産師コースに落ちたからと言って、それは許さないといったようなことを言われました」
──あと、助産師学校の模擬試験の結果が悪かったときも、そういうことを言わへんかった。
「言いました」
──そのとき、お母さんは何と言ったの。
「努力が足りないから、模試の結果が出なかったんであって、きちんと努力して、ちゃんと助産学校には行って、助産師になりなさいというようなことを言われました」
