3月30日にスタートしたNHK連続テレビ小説『風、薫る』に世間の関心が注がれている。見上愛と上坂樹里がW主演を務める本作は、明治という激動の時代に看護の道を切り拓いた2人の女性の友情を描く物語だ。第1週では、栃木の村でコレラが流行し、見上扮する主人公・一ノ瀬りんの父である信右衛門(北村一輝)が感染。放送開始からわずか4日で“退場”するという展開が視聴者に衝撃を与えた。
「いい父親ほど早死にする」という朝ドラのセオリー
信右衛門は、那須地域にあった小藩の元家老。家老といえば、家臣の中でも最重職だが、明治維新を前に自ら職を辞して農家に転じた役柄だ。畑仕事の合間に句を嗜み、娘たちにも学問を授ける聡明で穏やかな父親だった。
朝ドラには「いい父親ほど早死にする」というセオリーがある。特に直近の作品は、いい父親が名言を残し、早々に退場するケースが多い。『あんぱん』では、加瀬亮演じる結太郎がヒロイン・のぶ(今田美桜)の幼少期に「女子も遠慮せんと、大志を抱け」と伝えた直後、出張先で病死した。
続く『ばけばけ』では、ヒロイン・トキ(髙石あかり)の育ての父である司之介(岡部たかし)こそ最終話まで生き残っていたものの、堤真一演じる実父の傳は第3週に退場。傳が何気なくこぼした「怪談とは、怖いだけでなく寂しいものよう」という台詞には、トキが怪談に惹かれる理由が詰まっている。
信右衛門もまた、「一時の風に流されず己が頭で考え、行く先を決めるのが大事だ」「学ぶことはときに世を渡る翼となり、身を守る刀になる」「生きろ、りん。お前はきっとやさしい風を起こせる」など、物語全体を包み込むような数々の名言を残して去っていった。キャスティング的にも、熟練俳優の力で一気に視聴者を引き込もうという狙いがあるのだろう。実際、北村の重厚で熱のある芝居は2週以降も視聴を継続させる動機になったのではないだろうか。


