シーズンを通したマネジメントにおいても岡田は原則に忠実だった。雨天順延などが重なり9連戦が発生した際には、先発順やリリーフの登板配分をプラン化して、酷使を避ける形で乗り切った。抑えの復帰直後の起用や不調組の再投入にはリスクもあったが、全体としては大崩れせず、シーズン終盤に11連勝を果たし、最速Vマジック点灯に結びついた。必要な場面で「割り切る」判断を行えることが、長いシーズンを通じた安定感を保証したのである。

 こうして阪神は85勝53敗5分で独走優勝、ライバルの巨人には18勝6敗1分と圧倒した。CSも無敗で突破し、日本シリーズではオリックスとの関西対決に。ここではシーズンで不調だった青柳晃洋を最終戦で抜擢し、湯浅京己を要所で投入するなど、状況に応じた柔軟な判断が光った。加えて、近本・中野の1、2番を軸とした攻撃と、盤石の投手陣を組み合わせ、打率や本塁打に頼らない“再現性ある勝ち筋”を貫いた点も特徴だ。阪神はその試合巧者ぶりとマネジメントの妙で、数字以上にオリックスを上回った。采配・戦術・戦略のすべてが噛み合い、“スマートな勝ち方”で日本一となった。

 岡田は、矢野燿大が辛抱強く水を与えた成長の芽を、最適な配置と哲学で「花」として咲かせた。役割の固定と判断基準の統一によって勝ち筋を実現し、再現性のある勝利モデルを築いたことが、2023年阪神の最大の強みであった。出塁と制球を両輪に据え、得点と失点をともにコントロールする戦い方は、長いシーズンも短期決戦も勝ち抜ける普遍性を持っていた。

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聖域なき決断

 阪神史上初の連覇を狙った24年は、“守り勝つ”原則を軸に、接戦を拾いにいく一年だった。最終的には巨人と3・5ゲーム差の2位でレギュラーシーズンを終え、投高打低の色合いが濃いチーム像がはっきりした。

「最少得点を守り切る」とは、裏を返せば攻撃に波があり、ロースコアを是とするゲームメイクが多かったということだ。ただ、攻撃の中心選手の佐藤の失策が目立ち、失点がかさんだ。また、8回の継投準備のミスからの逆転負けという“コミュニケーションのほつれ”も露呈。勝ちパターンの想定と現場の連携が噛み合わなければ一瞬で崩れるという、接戦主義のリスクも浮き彫りになった。

 この年特に目立ったのは“聖域なき決断”だ。主砲・大山の二軍調整、開幕投手・青柳の度重なる再調整、佐藤が不調で二軍降格、さらには森下の再整備と、主力にも容赦なくテコ入れを断行。助っ人ではノイジーも早々に二軍へ送り、低迷を長引かせない姿勢を徹底した。