2016年から球団史上初のリーグ3連覇を達成し、黄金期を築いた広島東洋カープ。近年は苦境が続いているが、往時の采配には2つの課題があった。そう指摘するのが野球評論家・著作家のゴジキ(@godziki_55)氏だ。
その課題が現在の苦境につながっているのか? ここでは、同氏の著書『マネジメント術で読むプロ野球監督論』(光文社新書)の一部を抜粋。黄金期の残響を検証する。
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打力と機動力を融合した歴代屈指の野手陣
2016年から広島は球団史上初のリーグ3連覇を達成し、“黄金期”を築いた。その原動力となったのが、圧倒的な攻撃力と機動力の融合である。緒方は走塁を重視し、一つ先の塁を狙う積極走塁を奨励した。送りバントなどの小技も要所では辞さないものの、序盤から大量点を狙う場面では強打者に強攻させるケースが増えた点で、従来の日本的な「まず送る」采配からの脱却も見られた。実際、無死一・二塁で強打者が打ちに出てビッグイニングをつくる場面も多く、打線の爆発力を最大化する戦略が取られている。
田中広輔、菊池、丸の上位「タナキクマル」トリオが高出塁率を誇り、クリーンアップの新井とエルドレッドが勝負強い打撃で返すのが基本の形。下位打線にも松山竜平や安部友裕、會澤ら打力のある選手を配し、代打や代走・守備要因まで含め、歴代で見ても屈指の野手力を形成した。
16年には7人の打者(新井、菊池、田中、エルドレッド、松山、丸、鈴木)が二桁本塁打を放ったうえに、俊足巧打の選手が揃い、盗塁数も100以上で常にリーグ1位を記録。打力と機動力の相乗効果で、広島は常に試合終盤まで反撃の糸口を掴んだ。「逆転のカープ」という異名が示す通り、16年は89勝中45勝が逆転勝ち。守備面では二遊間の菊池・田中が鉄壁で、野間ら俊足選手を終盤の守備固めに投入する采配も定石化し、リードを守り切る工夫もなされた。
前田健太が前年オフにメジャー挑戦したが、それでもリーグトップのチーム防御率を記録。この背景には、投手陣全体の底上げと充実した継投策があった。先発はジョンソンや黒田、野村祐輔らが軸となり、それまで実績の少なかった岡田明丈、薮田和樹といった翌年以降に活躍する若手も台頭した。リリーフでは、15年に中﨑翔太を守護神に抜擢して以降、今村猛や外国人のジェイ・ジャクソン、ブレイディン・ヘーゲンズ、一岡竜司ら層の厚い救援陣を整備し、盤石の継投パターンを確立した。
