マネジメント面では、黒田と新井という精神的支柱の力を最大限に活用した。黒田は先発陣を牽引し、新井は打棒が復活しMVPに選出される活躍で若手を引っ張った。緒方はベテランを単なる功労者ではなく戦力の中核として遇し、試合前の円陣などで新井や黒田が発する言葉がチーム全体の士気を高めた。また、前年まで二軍暮らしの鈴木を抜擢し、結果的に首位打者争いを含むシーズン打率.335、29本塁打、95打点と大ブレイク。野間や西川龍馬といった将来のレギュラー候補にも代走・守備固めなどで一軍経験を積ませた。
起用方針は実力・成果主義。不調の選手や結果を出せない選手はたとえ実績者でも二軍落ちやスタメン落ちを厭わず、その代わり調子の良い選手を積極的に起用した。この方針に選手も応え、控えだったプライディや小窪哲也が勝負強い代打で結果を残すなど選手層全体の底上げが進む。シーズン途中にはベテラン永川勝浩を約2年ぶりに一軍昇格させ、中継ぎの駒として復活登板させるなど、ファームで準備の整った選手にチャンスを与える公平な人事も光った。こうしたマネジメントが、ベテランの経験値と若手の躍動を融合し、長丁場のシーズンを戦い抜く原動力となったのだ。
CSでは勢いそのままにDeNAを下したが、日本シリーズでは日本ハム相手に2勝4敗で敗退。
短期決戦の弱さが露呈した采配
緒方のポストシーズン采配は基本的にレギュラーシーズンの延長線上で、普段通りの戦い方を貫くスタイルだった。その結果、第1戦、第2戦こそ大谷を攻略するなど野手力の物量で勝利したものの、敵地での第3戦以降は4連敗と失速。ジャクソンの不調など誤算もあったが、シーズン中の采配に固執しすぎ、短期決戦での柔軟さに欠けていた。
例えば継投策のタイミングなど、日本ハムの栗山監督との駆け引きで後手を踏んだ場面が散見された。緒方自身も「交代のタイミングを間違えた。今季ずっと切り抜けてきたが、自分の判断ミス」とコメントしており、投手起用に差が出たシリーズだった。とはいえ、25年ぶりのリーグ優勝という最大目標を成し遂げたこの年の采配は概ね高く評価され、短期決戦の戦い方は次年以降の課題として残った。
翌年も、前年の勢いそのままに球団史上初のリーグ連覇を成し遂げる。2位に10ゲーム差をつける圧勝で、チーム総得点は12球団トップの736に達した。チーム打率.273、本塁打152本、盗塁112、長打率.424はいずれもリーグ断トツの1位だった。さらに、「同年の平均的なチームと比べて、打撃でチーム総得点を何点分増やしたか」という指標では歴代1位の177.を記録(2位は05年のロッテで167.5)。前年の117.3と比較しても、打線がレベルアップしたことがわかる。このシーズンも41試合が逆転勝ちで、88勝の実に半数近くを占めた。
