一方で機動力野球には陰りも見え始めた。チーム盗塁数こそリーグ最多ながら、盗塁成功率が低く、走ることが得点に結びつかない場面も目立った。実際、統計指標のwSB(盗塁による得点価値)はマイナス3・67で、盗塁が必ずしも得点増に寄与していない。それでも緒方は方針を崩さず、盗塁死を恐れて消極策に転じることはなかった。
この姿勢は短期的にはリスクだが、長期的には相手バッテリーへのプレッシャーとなり得点機会を増やす効果もあった。しかし結果的に、この年の日本シリーズではその弱点を突かれる形となる。
安定していた打撃陣とは反対に、この年は投手陣の弱体化が顕著だった。チーム防御率はリーグ3位とはいえ4.12と悪化し、4点台防御率での優勝は85年の阪神以来。先発では大瀬良大地が15勝で最多勝と最高勝率のタイトルを獲得しエースに成長したが、あとはジョンソンを除いて軒並み成績を落とした。前年15勝の薮田は不調でわずか1勝に終わり、九里亜蓮や岡田らもローテを埋めたが防御率は軒並み4点台後半と安定感を欠いた。リリーフ陣ではフランスアが戦力として加わり、中﨑、今村、一岡らと勝ちパターンを形成。しかし、シーズン後半には疲労からか失点が増え、終盤に追いつかれる試合もしばしば起こった。
それでも総合力では他球団を上回り、危なげなく優勝を決めた。逆転勝利は3年連続40試合以上となる41試合に上る。緒方政権3年目にして、粘り強さと爆発力を兼ね備えたチーム文化が完全に定着したシーズンだった。
日本シリーズで露呈した緒方采配の限界
3度目の正直で悲願の日本一を目指し、CSは相性がいい巨人を相手に4戦全勝(アドバンテージ含む)と圧倒。勢いそのままに日本シリーズへ駒を進めた。しかし、迎えたソフトバンクとの日本シリーズでは、第1戦に引き分け、第2戦に勝利したものの、第3戦以降は攻守で後手に回り1勝4敗1分で敗退。緒方の采配は概ねレギュラーシーズンと同じだったが、ソフトバンクという強力な相手に対して策の限界が露呈した面は否めない。
最大の誤算は機動力野球が封じられたことだ。広島はシリーズで盗塁を8度試みたが、驚くべきことにすべて失敗に終わった。さらに、本塁突入での憤死も2度あり、走塁は完全にソフトバンクバッテリーに読まれていた。前述したように盗塁成功率の低さはシーズン中からの課題だったが、短期決戦でも強行した緒方采配は裏目に出た。
投手起用でも後手に回った。第3戦では先発ジョンソンが早々に捕まり、早めの継投策が必要だったが、緒方は5回まで引っ張り大量失点を許してしまった。逆にソフトバンクの工藤は、奇襲的なオープナー起用や小刻みな継投で広島打線を幻惑した。