「野球は投手力と守備力がなければ優勝できない」――そんなプロ野球の常識を完全に破壊したのが、2018年、19年にパ・リーグを連覇した辻発彦監督率いる埼玉西武ライオンズだ。
当時のチームで、新人遊撃手として史上初の全試合フルイニング出場を果たしたのが、2026年のWBCでも正遊撃手として活躍した源田壮亮。辻監督はそんな源田選手にある言葉をかけていた――。
野球評論家・著作家のゴジキ(@godziki_55)氏による『マネジメント術で読むプロ野球監督論』(光文社新書)の一部を抜粋し、潤滑油として西武を支えてきた辻監督ならではの思いに迫る。
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野手力を礎に描いた再建の軌跡
辻は17年、埼玉西武ライオンズの監督に就任。当時チームは3年連続Bクラスと低迷していたが、「僕の原点はライオンズですから。常に優勝争いをしてパ・リーグの盟主であってほしい。セ・リーグのコーチ時代もずっと気になっていたんです。当時の主力は中村(剛也)や栗山(巧)、浅村(栄斗)、秋山(翔吾)らがいて、若い選手も育ってきていた。なんでこれだけの選手が揃って勝てないのか……。
一番の穴はショートでした。理想はやはり、ピッチャーを中心にセンターラインがしっかりとしたチーム。計算できる守りがあってこそ戦える」とコメントするほど、野手はある程度計算できていた。早速1年目の開幕から上位争いに食い込み、最終的には2位に。強力打線で打ち負かす「山賊打線」の片鱗もこの年から現れ、得点数は前年の619点から690点へと大幅に増加。前年はリーグワーストを記録した失策数も101から88へと改善し、チーム全体のクオリティが向上した。8月には球団59年ぶりとなる13連勝を記録し、9月以降の楽天との激しい2位争いを制した。
CSは初戦こそ勝利したものの、2戦目以降はリードを許す展開で苦しみ、ファーストステージで敗退。しかし、前年まで低迷していたチームを初年度でいきなり2位に押し上げた手腕は確かだった。特に攻守両面での意識改革は顕著で、走塁・守備意識の浸透は得点増・失策減に表れた。
中島がチームを去ってから西武は遊撃手を固定できず、野手の層がありながらも弱点であった。その中で辻はキャンプ初日で守備のリズムとスローイングを見て、源田を開幕遊撃手に大抜擢したのだ。源田は新人遊撃手として史上初の全試合フルイニング出場という快挙を達成。打力も向上して、球団新記録となる155安打を記録。当初は9番打者だったが途中からは2番打者として固定される。
