秋山、浅村、中村、栗山ら経験豊富な打者は基本的にシーズンを通してスタメンに据え続けられた一方、源田以外にも若手や調子の良い選手を起用する柔軟性が見られた。例えばシーズン途中から台頭した山川穂高は、夏場以降はメヒアに代わる一塁手兼クリーンアップとして抜擢され、期待に応え4番に定着。8月には月間MVPに輝いた。ユーティリティプレーヤーの外崎修汰も時にはスタメンで、時にはチーム状況に応じて起用。辻は状況に応じて内野陣の守備位置を柔軟に動かして打者の傾向に対応した。特に二遊間の連携や外野守備位置の細かな調整など、「守れる布陣」で失点を防ぐ意識が見られた。

 さらに「走塁意識」をチーム方針に掲げ、全員野球での機動力向上を図る。その結果、源田はリーグ2位タイかつ球団記録の37盗塁、外崎も23盗塁を決めるなど複数選手が二桁盗塁を記録。盗塁以外も積極走塁を促し、次の塁を狙う意識づけを徹底した。

 足でかき回して打って返す西武らしい攻撃野球が蘇った一方、犠打などの小技を活かした戦術には必要最低限にとどめる方針が見て取れる。辻自身は「小技の名手」だったが、この年の西武打線は長打力が武器であり、初回から送りバントでアウトを与えるよりも強打者に託すケースが多かった。浅村や中村は当然だが、源田に関しても状況次第では強攻させた。とはいえ、接戦の終盤では送りバントなど基本的な作戦もそつなくこなし、勝利に必要な手はしっかり打っている。

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 投手陣に関しては、エースの菊池雄星を軸に据えた先発ローテーションを構築。先発が不調な試合では早めに見切りをつけるなど、勝負どころでの継投には迷いがなかった。特にシーズン序盤から牧田和久、ブライアン・シュリッター、増田達至の安定した勝ちパターンが機能した点が大きく、春先から上位に食い込むことができた。

打ち勝つ野球で常識を覆した「山賊打線」

 翌18年は開幕8連勝で波に乗り、その勢いのまま一度も首位を明け渡すことなくペナントを制した。リーグトップのチーム打率.273と球団新記録かつNPB歴代3位の792得点を叩き出す強力打線は「山賊打線」と呼ばれ、投手陣のリーグワースト防御率4.24、653失点をカバーした。防御率、失点、失策がいずれもリーグ最下位という極端な状況での優勝は日本プロ野球史上初の快挙である。本書で取り上げてきた多くのチームがそうであったように、従来は投手力を中心とした守りが優勝の鍵といわれていたが、その常識を覆す采配・チームづくりが光った。

 優勝時に辻は「個の能力をどう活かせるか。山川(穂高)だったら振って相手に恐怖を与える長打が魅力。中村(剛也)もそう。個の良さがもっと出てくれれば間違いなく強くなると思っていました。勝負強い選手もいれば、ここ一番で走ってくれる選手もいる。バランス的なところが成長したと思います。一度も落ちることなくトップで走り抜けた選手たちを誇りに思います」とコメントしている。