そこまでつらい思いをしてまで出世するなら、みんなで一緒に仕事をして成果を出したい――そう考えるのも無理はありませんね。
出世のため地を這うような努力を重ねてきた上司世代からすると、価値観の差に驚くかもしれません。しかし大前提として上司世代と若手世代とでは、時代背景が大きく異なることも忘れてはなりません。
上司世代の中には、伸びしろがあり、希望のある環境で仕事をしてきた人が多く、頑張ればもっと上に行けるというマッチョなやり方が効果的な面もありました。世の中の「もっと頑張って上を目指そう」というムードも後押ししたのかと想像しています。
しかし今は、「こうしていけば報われる」といったゴールが見えにくい時代。いつ自分の仕事をAIに奪われるかもわからない。現に、今は「ブルーカラー・ビリオネア」といい、AIで代替できないブルーカラーの仕事、専門スキルを身に付けた人のほうが報酬が高くなる時代に転換してきています。何が正解かがわからず、先の展望を持ちにくくなっています。
さらに今の若手世代は、そこまで「上」を求める必要に迫られていません。「いい暮らし」の水準としても、車を保有したい欲求もなく、服はユニクロなどのファストファッションでも十分に質が担保されます。
不動産が高騰しているなら実家から通えばいい。無理して都内に住もうとせず、郊外の築古物件でいいじゃないか。プラスαで、ちょっといい私ができたらベストだし、できなくてもいい。
「苦労してまで昇進する必要はない」という価値観
また、給料の伸びも鈍化しています。パーソル総合研究所の2025年の調査によると、2024年に年収が増えた人は51.9%と約半数。3%以上の増加があった人は約4割にとどまり、20~30代の若年層でも約4割は年収が上がっていないことがわかりました。
上がったとしても微々たるもので、ハイペースで進む物価高に給料の上げ幅が追いつかず、生活は一向に豊かにならない。以前と比べ、労働の対価が見えにくい時代を生きているのです。
一方でSNSを開けば、なぜか同年代でも自分よりいい暮らしをしている人、自分より成果を出している人ばかりがどんどん目に飛び込んできます。そうなると相対的に、自分の成果を感じにくく、仕事に力を注ぐ意義も見出しづらくなります。
