成長戦略会議の資料は、量子テクノロジー市場が2040年頃に14兆円以上に達すると見通す。この数字に現実味はあるのか。京都大学教授で『教養としての量子コンピュータ』(ダイヤモンド社)を著した藤井啓祐氏が文藝春秋PLUSの番組で、量子コンピュータをめぐる投資競争と日本の立ち位置、そして実用化までに必要なブレイクスルーについて語った。(全2回の2回目/はじめから読む)
(初出:「文藝春秋PLUS」2026年4月6日配信)
計算は、石油と同じ“資源”
量子コンピュータ開発を先導するのは、Google、IBM、Amazonといった巨大IT企業だ。藤井氏は「計算能力を持つほどイノベーションが生まれ、経済力が向上する。石油と同じように、計算は資源とみなされている」と述べ、AIの急速な発展がこの流れを加速させていると説明する。既存のデータセンターを拡充するだけでは将来的に限界があり、量子コンピュータが次の計算資源として注目されている。同時に、過去10年以内に立ち上がったスタートアップ企業がニューヨーク市場などに上場するなど、新興勢力の台頭も著しい。
富士通、NEC、東芝、そしてスタートアップ
日本では富士通が超伝導型量子コンピュータの開発で国内を代表し、国産量子コンピュータの稼働も始まっている。藤井氏は「NECはもともと超伝導型量子コンピュータの先駆けであり、当時は世界の三周先を行くほど」と振り返り、東芝も量子暗号分野や誤り耐性量子コンピュータの理論研究で世界的な存在感があると評価した。
さらに、検出器の浜松ホトニクス、世界最高性能の冷凍機を開発したアルバック・クライオなど、周辺コンポーネント分野でも日本企業の技術力が生かされているという。スタートアップも活発で、冷却中性原子方式のYaqumo、光ネットワーク技術のNanoQT、藤井氏自身が創業に関わったソフトウェア企業のQunaSysなどが大学発のイノベーションを産業化する動きを加速させている。
