「退官後も役所に縋って生きていくのはもう古い。もはや天下りの時代ではないのです」

 そう語るのは現在、経済安全保障のコンサル会社を経営している、元国家安全保障局長の北村滋氏だ。北村氏が語るように、“第二の人生”を元官僚たちが独自に切り開くケースが少なくない。元大物官僚たちの再就職先を徹底取材した「文藝春秋」5月号の記事を一部紹介します。

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官邸の守護神が営むコンサル

 平成初期に社会問題化したキャリア官僚の天下りが転機を迎えたのは2007年。第一次安倍政権で国家公務員法が改正され、出身官庁が再就職の斡旋を行うことが禁止された。

 結果、独立行政法人や関連団体への天下りは鳴りを潜めたものの、その後も様々な問題が噴出した。2017年には文科省が大学などへ組織的に再就職を斡旋したことが発覚。当時の前川喜平次官(54年、旧文部省)ら40名超の幹部らが処分を受けた。

 2023年には、国交省の本田勝元次官(51年、旧運輸省)らOBが、同省が多くの許認可権を持つ空港施設株式会社のトップ人事に介入したことも報じられている。

元国家安全保障局長の北村滋氏 Ⓒ文藝春秋

 エリート官僚たちの第二の人生は現在、どうなっているのか。財務省の局長経験者に聞くと、北村滋氏の意見に頷き、「いまは“サバイバル”の時代だ」と語った。

「昔のように、早くから次官候補を1人に絞り、それ以外の職員に早期退職を迫ることはなくなりました。結果として、定年まで勤める職員が増えている。一方で、省庁の斡旋は禁じられていますから、独自の人脈がなければ再就職できない。伝手がないまま定年を迎え、年金収入だけの元官僚も多い一方で、顧問や社外取締役を数多く務め、現役時代の数倍の年収を稼ぐ人もいます」

元大物官僚25人の再就職先を一挙掲載。詳しくは「文藝春秋PLUS」にて ©文藝春秋

 この局長経験者は最近のトレンドとして、北村氏のように個人会社を立ち上げる官僚が増えたことを挙げる。実際、今回調べてみると、各省に広がりを見せていることが分かった。

 北村氏の後輩にあたる中村格(いたる)元警察庁長官(61年、警察庁)は2022年、安倍元首相銃撃事件の責任を取る形で長官を辞任したが、翌年には「オフィス中村」を設立。コンプライアンスについてのコンサル業務を行う。ほかにも、大島一博元厚労次官(62年、旧厚生省)の「社会政策研究所」や、末松広行元農水次官(58年、農水省)の「次世代産業研究所」、西正典元防衛次官(53年、旧防衛庁)の「西事務所」などが確認できる。

「メディアへの出演料を法人口座で受け取る人もいる。節税対策が目的の会社も多いのでは」(官邸幹部)