埼玉医科大学に勤める医師・澤田政史さん(43)。医師といえばエリートの代表的な職業だが、白衣姿が似合う澤田さんには実は意外な過去があった。若い頃は“悪い世界の人たち”と付き合っていたこともあるという「元ヤン」ドクターなのだ。

 10代でヤンキー道に突き進んだ澤田さんは大学受験に失敗。自宅に引きこもった期間を経て知人の会社に就職するが、消えない劣等感と後悔が常にあった。医学への再挑戦を決めたのは28歳の時だ。大きな回り道の末に夢を掴むまでの軌跡を、ライターの内田朋子さんが詳しく聞いた。(全3回の3回目/最初から読む)

現在の澤田政史医師 本人提供

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「2年計画」で働きながら医学部合格を目指す

――中学生までは勉強がよくできていたとはいえ、10年のブランク。勉強の勘はすぐに戻りましたか?

澤田さん(以下、澤田) 2011年3月1日、お見舞い帰りに立ち寄った書店で昔できたから大丈夫だろうと思って高1のテキストを手に取りましたが、マジで訳が分かりませんでした。「H」が水素の元素記号であることすら覚えてない。これはもっと前からやり直さないとダメだと思い、中1のドリルから高3までの参考書とノートをまとめて数万円分ほど購入し、勉強を始めました。

 とはいえ、高校卒業から10年経過しており、中途半端な決意で親に再度医師を目指すことを伝えて、ぬか喜びさせるのは申し訳ない。区切りとして、1カ月で中学生の勉強を終えられたら、親に医学部受験に挑戦することを伝えようと決めました。結果的に、1カ月後に親に積み上げたノートを見せ「中途半端に大学受験を諦めたけど、もう一回挑戦したい。もし医学部に受かった場合は支援をお願いしたい」と伝えました。

――ご両親はなんと?

澤田 父は「好きにしていいよ」の一言でした。もう少し喜んでくれると思ったんですが(笑)。

――どんな勉強法を実践されたのでしょう?

澤田 挑戦するなら事前のプランが大事だと考え、国立医学部を第一志望に見据え、合格までに2年かける計画を立てました。私大の医学部は英数と理科2科目の4科目で受験できるので、1年目は英数理に絞り、2年目で国語と社会を加えてステップアップして全教科を完成させる想定です。

 勉強は早朝や、通勤時間などの隙間時間が主で、活用したのは左腕。「あれなんだっけ?」と、暗記科目で覚えられないものは左腕に書き、覚えたら消すという単純なルールを課しました。ほぼノート代わりだったので、1年間は左腕を綺麗に洗った記憶がありません(笑)。今はスマホがありますが、当時はガラケーだったのを思い出すエピソードで時代を感じますね。