『眠れぬおまえに遠くの夜を』(文藝春秋)

 桐野夏生さんの最新作の舞台は、「韓国芸能界」。K-POPや韓国ドラマが世界的に注目を浴び、大きな成功を収める一方、スキャンダルへの過剰な対応や契約問題など負の側面が話題になることも多い。

 今作では、栄光の果てに転落する男・ナダンを、演技派俳優・テミンのモノローグによって語る。二人は10代の頃、アメリカ・アナンデールで出会い、ともに時間を過ごしたが、やがてナダンはアイドルとして驚くべき速さで成功を収め、そして恐ろしい速さで転落していった。

 世界を股にかけ、その後芸能界から追放されたK-POPスター。その光と影、生と死を、桐野さんはいかに小説にしたのか――。

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――今作の舞台は「韓国芸能界」。桐野さんご自身はよく韓国エンタメに触れていらっしゃるのですか?

桐野 コロナ禍で外出自粛がはじまった2020年から、配信サイトで韓国ドラマを見るようになりました。これまでの韓国ブームは横目で通り過ぎていたのですが、『愛の不時着』を見たらハマってしまって、次々に視聴しています。

 

 韓国エンタメには、人の心をつかむ「肝」のようなものが詰まっていると感じています。財閥の御曹司が平凡な女子に恋する……なんて、日本の今の小説界では「リアリティがない」と一蹴されそうなテーマですが、格差問題は普遍的ですし、面白いです。幼稚なものもなくはないですが、お金だったり、美貌だったり、若さだったり、プリミティブな欲望をむき出しにしているところが日本のエンタメとは違って面白く感じています。