2008年には写真も実名もスクープされていた

 数々の代表作がつくられたのは2000年代。チーム体制を築いて英ロンドンに移り、下流でしぶとく生き残る「ネズミ」をトレードマークに権威をおちょくるグラフィティアートを描いていった。前述の東京都の絵も2003年ごろの作品とされている。

 一挙に世界的注目を集めたのは2005年、中東のヨルダン川西岸地区でのこと。イスラエル軍から威嚇射撃されながら、パレスチナを囲む分離壁に、その壁自体を壊すだまし絵のような政治アートを描いたのだ。

 ブラッド・ピットらハリウッドスターたちをファンにつけ、きらびやかな「時の人」となったバンクシー。じつは、このころ、英国のタブロイド紙に正体がすっぱ抜かれていた。2008年時点で写真も実名もスクープされていたものの、かたくなに「偽者」と否定していたのだ。

ADVERTISEMENT

 限界がきていたバンクシー陣営は、改名手続きをとることとなる。広まってしまった出生名が出入国などの記録に残らないほうが動きやすくなるためだ。新たな名前は「デヴィッド・ジョーンズ」。イギリスでは「鈴木一郎」のような一般的な名前でありつつ、かのデヴィッド・ボウイの本名でもある。

 2010年代には、21世紀を代表する現代美術家へと成長していき、創作の規模も大きくなっていった。制作したドキュメンタリー映画によってアカデミー賞にノミネートされ、2015年には、英国にディズニーランドを模したテーマパーク「ディズマランド」をまるまる建設したほどだ。