――企業だけが儲かっている?

杉村 残念ながら、「トリクルダウン※3(企業が儲かれば、その富がしたたり落ちるように個人や労働者も富む)」は起きなかったということです。

 政府は法人税を引き下げ、企業を儲けさせれば、その富は賃金に回ると信じていた。でも企業は、そのお金を内部留保としてキャッシュで溜め込んでしまったんです。

新NISAは「政府による新たなトリクルダウン戦略」である

――その現状を踏まえて、今の「新NISA※4」や「貯蓄から投資へ」という流れをどう見ていますか?

杉村 新NISAこそが、政府が仕掛けた「新たなトリクルダウン戦略」だと私は見ています。もう企業にお願いして賃金を上げてもらうのを待つのは限界がある。だったら、企業の溜め込んだ利益を「配当」という形で国民に直接還元させよう、というわけです。

――配当として受け取ることで、企業の利益を直接、個人の懐に入れるということですね。

杉村 そうです。しかもその配当を「非課税」にした。企業が稼いだ最終純利益から出される配当を、国民が直接受け取る。これこそが、内部留保を国民に還流させるための「パイプ」なんです。

――だからこそ「投資をしないと損」だと。

 

杉村 その通りです。我々の世代は、この「受け皿」を自分たちで作らなければならない。企業利益がこれだけ伸びているんですから、その恩恵を「給料」としてではなく「株主」として受け取る。この仕組みを理解しているかどうかが、これからの格差を決定づけるでしょう。

――最近は「S&P500※5」や「オルカン※6」などの「インデックス(市場全体に投資する投資信託)」への長期積み立て投資が人気ですが、杉村さんはそれに対して少し懐疑的な意見をお持ちですね。

杉村 インデックス積み立て投資、全否定はしませんよ。でも、正直に言って「つまらない」じゃないですか(笑)。安く買って高く売る、という投資の醍醐味がない。政府が「リスクがない」と言って勧めるのは、要するに「新手の貯金」だからです。

――長期積み立て投資で平均値を取るだけでは、資産は劇的には増えないと。

杉村 私はインデックスに積み立てるだけだったら、今の資産は築けなかったと思います。「インデックス投資」は、福袋なんですよ。自分にはいらない商品もたくさん入っている。だから、自分で投資先を選択できる個別株にこそ、投資の醍醐味があります

◆◆◆

※1ミクロ経済…家計や企業など、個別の経済主体の行動を分析する学問のこと。商品の価格がどう決まるか、消費者がどう選ぶかといった細かな意思決定に焦点を当てる。

※2マクロ経済…国や地域全体の経済の動きを大きな視点から捉える学問のこと。 GDP、物価、失業率、消費や投資の合計値を扱い、政府の政策が社会全体にどう影響するかを分析する。個別の取引ではなく、経済全体を鳥の目のような高い位置から俯瞰する。

※3トリクルダウン…富裕層や大企業が豊かになれば、その滴(しずく)が下へ落ちるように、経済全体や貧困層にも恩恵が行き渡るという理論。しかし、実際には富の偏在が進むだけで格差が拡大し、庶民まで豊かさが届かないとする批判や検証結果も多く存在する。

※4新NISA…2024年に始まった、個人の資産形成を後押しする非課税投資制度。投資枠内で得た利益に税金がかからず、運用できる期間も無期限となった。生涯で1800万円まで投資可能で、貯蓄から投資への流れを加速させる国の主要な政策となっている。

※5 S&P500…米国を代表する500社の株価を指数化したもの。ここでは500社へまとめて投資する手法を指す。米国優良企業への分散投資が可能となり、長期的な実績が安定しているため、現代の資産形成における「王道」とされている。

※6オルカン…「オール・カントリー」の略で、全世界の株式にこれ一つで投資できる投資信託の通称。日本を含む先進国から新興国まで幅広く分散投資するため、特定のリスクを抑えつつ世界経済の成長を享受できる。

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