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男は金づちとたがねを用意して⋯
バレエ教室側はこれ以上のトラブルを避けるため、高橋に「これまでのレッスン料を返却する」との連絡を入れ、誠意ある対応で解決を図ろうとした。
すると、それっきり高橋からの連絡はなくなった。バレエ教室側はホッとしていたが、実際は高橋の怒りが消えたわけではなかった。頭の中では里美さんへの憎しみが離れず、それから半年間、沸々と負のエネルギーをため込んでいたのである。
高橋はイライラが収まらず、整体師の仕事を辞めてしまった。気晴らしにロシアへ行き、バレエ鑑賞したが楽しめず、「こうなったのはすべてあいつが悪い」と考えるようになった。
頭に浮かんだのはボコボコに殴ることだったが、よくニュースで容疑者が「殺すつもりはなかったのに、死んでしまった」と供述しているのを見て、「あんなに華奢な女を殴ったら、本当にそうなりかねない。死ぬまでのことはやらないんだったら、指を切ろう」と思い立った。そのための道具として金づちとたがねを用意した。
事件当日、高橋が朝一番でバレエスタジオを訪れると、里美さんが1人でスタジオのセッティングの準備をしていた。里美さんは反射的に振り向いて「おはようございます」とあいさつしたが、それが高橋だったので怪訝な表情を浮かべた。
「何しに来たんですか?」