巡視船を増強せよ
具体的には、海上保安庁の巡視船を静かに、しかし着実に増強していくことだ。そのための予算措置を講じることに加え、船を実際に動かし、現場を支える技術と経験を持った人材を、海上自衛隊退役者や民間から柔軟に確保・育成していくことが肝要である。目立つスローガンではなく、制度と能力を積み上げることこそが、主権を守る力になる。
また、同盟国の米国に対しては、安保条約第5条の適用確認を“儀礼的文言”にとどめず、尖閣の主権が日本にあるという日本の立場への理解を求め、力または威圧による一方的な現状変更を認めない日米の意思を不断に強化していく必要がある。
さらに、相手国の同意が得られにくいからこそ、国際司法裁判所(ICJ)等のカードは意味を持つ。中国が国際法の場から逃げれば逃げるほど、逆に日本は法の支配に立つ当事国として“攻め”の構図に立てるからだ。そのために日本政府は、将来の提訴の可能性を確保する観点から、証拠・論点・第三国向けの説明を平時から体系化し、いつでも提示できる準備を積み上げておくべき段階に来ている。
そして忘れてはならないのは、教育と社会の認識共有である。領土や主権の問題は、一部の専門家や政府部内だけが理解していればよいものではない。国民の多くが、何が争点で、どこに日本の正当性があり、相手がどのような手法で領有権の既成事実化を図っているのかを理解していなければ、民主国家として持続的な対応は難しい。平時からの教育、資料整備、国内外への発信は、一見地味に見えても、長期的には抑止力の一部を成す。
※約9400字の全文では、尖閣諸島問題から得られる教訓について垂秀夫氏が詳しく語っています。全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(垂秀夫「対中外交 尖閣の失敗を繰り返すな」)。
出典元
【文藝春秋 目次】東京極秘対談 ティール×トッド 世界は終末を迎えているのか/池上彰×佐藤優 “暴れ獅子”トランプと“女豹”高市の生きるか死ぬか/官邸官僚の第二の人生
2026年5月号
2026年4月10日 発売
1300円(税込)
