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温かくユーモラスな視点
台湾の重い歴史を映画にするうえでこだわったのは、監督デビュー作『熱帯魚』以来変わらない「小人物の物語」を描くことだった。
「私が特に興味を持ったのは、当時の社会の下層を生きていた、農民や車夫、チンピラ、泥棒といった無名の人々でした。エリートや知識層、また白色テロの犠牲者本人ではなく、その遺族である妹の目線から時代を見つめることで、得意の『小人物の物語』を描けると思ったのです」
本作が台湾で好評を得たのは、まさにこうしたアプローチのためだった。白色テロ時代を描いた映画としては珍しく、トーンはどこか軽やかで温かく、くすりと笑える場面もある。
ところがユーシュン監督は、プレミア上映で観客の笑い声を聞いて驚いたそうだ。「残酷な映画にはしたくなかったけれど、ユーモラスにしようとも思っていなかったから」と振り返る。
「当時がきわめて残酷な時代で、この映画がシリアスかつ悲惨な物語であることは自覚していました。だから、観客を笑わせたいとは思わなかった。しかし、私が当時の現実を残酷に撮れるとも、観客がその現実をずっと見ていられるとも思えなかった……。強いて言えば、人物が懸命に生きていることから、自然にあふれるおかしみや愛おしさがあるということ。私はただ、それに従っただけだと思います」

