「ミヤザキ」と名乗っていた松永太
結局、少女は病院へは行かなかったが、祖父母は健康保険証もないと聞き、心配になった。少女は小学校1年の時、住民票をこの祖父母宅のマンションに置き、近所の小学校へ通ったことがあった。この際、キチンと国民健康保険に加入させようと祖父母は区役所に出向き、手続きを取ったという。
「私、アルバイトするね」
祖父母宅で徐々に元気を取り戻した少女は2月9日、門司駅前のレストランの面接を受けに出かけている。
面接をしたレストラン店長の証言である。
「2、3日前に電話があり、面接をしました。印象は非常によく、かわいらしい子だった。表情も明るく、すぐ採用を決め、2月19日午後6時からバイトに来てもらうことにしました」
その時、少女はトレーナーにジーパンとカジュアルな服装だったが、店長は「顔が随分、白いなあ。化粧を濃くしているのかな」と思ったという。少女は顔にできた痣を隠していたのである。
しかし、こんな平穏もつかの間。2月15日夜――。
「ミヤザキ」と名乗る男が少女を連れ戻しにマンションへやってくる。この男は3月7日、福岡県警捜査員に逮捕された40代と思われる監禁犯の一人だ。スーツにネクタイ、小脇にポーチを抱え、身なりのいいサラリーマンといういでたちだった。少女は「ミヤザキ」と、「モリのおばちゃん」と呼んでいた女(逮捕)と一緒に暮していたとだけ祖父母に説明していた。
ミヤザキと名乗った男は、奇妙なことに運転免許証など身分を示す物は一切、所持していない。この時も男は、父親の実姉になる少女の伯母の車に乗り、伯母と一緒に祖父母宅へやって来たという。ミヤザキは少女の父親を“所長”と呼び、床に手をつき、祖父母に大仰にこう言った。
「私はお父さんから『娘が18歳になるまで世話を頼む』といわれ、その責任があります。お願いですからA子ちゃん(少女)を戻してください。私が約束を果たさないと所長から半殺しにされます」
《この続きは「週刊文春 電子版」で掲載中。松永が少女に強いた残虐な行為、そして松永と緒方の逮捕劇について報じている。さらに「週刊文春」では、小野一光氏による連載「矜持 北九州監禁連続殺人 捜査本部の初告白」を掲載中。当時、福岡県警捜査一課で特捜班長を務めていたT氏が初めて事件について告白し、捜査の全容を明らかにしている》
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