事故の原因とみられる「120mm滑腔砲」
国産戦車の主砲が120mm滑腔砲に変わったのは、3世代目の90式からである。この仕様変更の背景には、性能上の利点だけでなく、国際的な世界標準への適応があった。アメリカのM1エイブラムス戦車をはじめ、NATO諸国のドイツのレオパルト2、フランスのルクレール戦車、イスラエルのメルカバなどが、軒並みこの120mm滑腔砲を採用していたのである。
90式戦車に搭載されていた120mm滑腔砲は、ドイツのラインメタル社が開発し、日本製鋼所がライセンス生産していた。これに対して、10式戦車に搭載される120mm砲は、日本製鋼社が開発・製造した国産であり、ラインメタル社製より優秀といわれている。
2世代目の74式戦車までは、弾道が安定するライフル砲が採用されていた。なぜ、砲身内がツルツルの滑腔砲に戦車砲弾が変わったのか。それは「戦車の敵は戦車」という前提からである。敵戦車の厚い装甲をぶち抜く徹甲弾は、砲身内に溝を切ったライフル砲より、ツルツルの砲身のほうが摩擦が少なく、弾速が早くなり、結果として貫通力が増すからである。
では、弾道をどうやって安定させるのか。その仕組みは様々だが、貫通力がより高い徹甲弾でいえば、超音速で放たれる弓矢のようなもんである。つまり、弾芯に弓矢のような翼をつけ、それを筒(サボット)で覆い、高速で発射する。砲口から飛び出た直後、筒は空気抵抗により3方向にはじけ散り、弾頭のみが高速で目標に向かうという具合である。
さらに弾頭の方も、敵戦車の装甲を貫くという目的のために、日本独自のAPFSDS(対戦車徹甲)弾とHEAT(対戦車榴)弾の2種類がメインとなっている。徹甲弾は、文字通り敵装甲をぶち抜くための固い弾芯が必要であり、自衛隊ではタングステン鋼が使われている。
ちなみに、アメリカとロシアの徹甲弾には、より固くて重い劣化ウラン弾が使われている。このウラン弾頭は核分裂の副作用で産出され、タングステン鋼より安く、重くて固いと3拍子が揃う。名前はおどろおどろしいが、要は「安い、重い、固い」というだけである。もちろん、放射能汚染を引き起こすという指摘もあるのだが……。
さて、今回事故があったのは、もう一方の対戦車榴弾の方である。敵戦車などの装甲に当たると高熱を一方向に吹き出し、装甲内を焼き尽くすという、敵戦車兵にとっては脅威でしかない代物である。
不肖・宮嶋は、この120mm滑腔砲弾の、しかも対戦車榴弾に撃たれるという、めったにない経験をしたことがある。(つづく)
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