以前のアメリカでは「アジア系キャストの映画など誰も見に来ない」と信じられていたが…
ほんの少し前まで、アメリカでは、「アジア系キャストの映画など誰も見に来ない」「観客は字幕が嫌いだから外国語の作品は見ない」と信じられていた。しかし、2018年、3,000万ドルで製作された全アジア系キャストの「クレイジー・リッチ!」(原題は「Crazy Rich Asians」)が、北米だけで1億7,500万ドルを売り上げる大ヒットとなる。この時は原作小説がベストセラーだったからかとも思われたものの、数年後、オリジナルのアイデアで、宣伝にまったくお金をかけなかったNetflixの「イカゲーム」が社会現象となるほど大成功した。アメリカに住むアジア系が主人公の「クレイジー・リッチ!」と違い、「イカゲーム」はすべて韓国語だ。
ほかにも、Netflixからは、韓国系アメリカ人のクリエイターによる「BEEF/ビーフ〜逆上〜」が、今月第2シーズン配信開始に。第2シーズンでは、第1シーズンよりもっと韓国語のシーンが多い。また、昨年の「KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ」は、Netflixのオリジナル映画として、創業以来最高の視聴時間を稼ぐ記録的ヒットとなった。
つまり、今日の観客、視聴者は、面白ければスクリーンに出ているのが白人であれ、黒人であれ、ラティーノであれ、アジア系であれ、気にしないということ。有名人が出ているかどうかも決め手にならず、キャストが無名であっても関係ない。
四半世紀前までは、大スターが出ればある程度の興行成績は確保されると見られていた。だから、トム・クルーズ、ブルース・ウィリス、ジム・キャリーなどひとにぎりの男性スターは、映画1本で最低でも2,000万ドルを要求できた。それが次第に、誰が出ているかではなく、コンセプトで作品が選ばれるようになってきたのだ。
そんな現代において、「8番出口」は、ふたつの意味で強かった。ゲームの映画化なので、ゲーム愛好家にはすでに知名度がある。一方で、地下鉄から抜け出せないというのは、いかにも怖そうで、面白そうなコンセプトであり、ゲームを知らない人にもアピールする。「RottenTomatoes」に批評を投稿した観客にも、ゲームを知っていたという人、まるで知らなかったという人、両方が見られる。
そして、映画は、それらの人たちを満足させてみせたのだ。ゲームのファンからは「ゲームの映画化作品として過去最高」という声が聞こえてくるし、それ以外の人からは「シンプルさが良い」という意見が目立つ。もちろん、結末が物足りないとか、同じことの繰り返しで飽きるなどネガティブな感想もあるが、前述したように、87%の観客は楽しんだ。楽しいから、言語が日本語だとか、出演者に馴染みがないとかは、気にならなかったのである。

