65歳までの引き上げすらまだ終わっていない

 支給開始年齢の引き上げの歴史を長々と書きましたが、要するに支給開始年齢を引き上げるというのはそんなに短期間でできるものではないということです。55歳から60歳までの引き上げに要した期間は、20年、そして60歳から65歳までの引き上げは決定してからすでに36年が経過していますが、まだ終わっていません。

 このように、年金の支給開始年齢を変えるのは非常に時間がかかります。年金というのは、非常に長い期間にわたって保険料を納めていくからです。ずっと払い続けてきたのに急に来年から開始年齢を引き上げるということは、現実には不可能なのです。相当な時間をかけ、さらに経過措置として「特別支給の老齢厚生年金」といった制度も併せて作りながら徐々に変えていくしかありません。そして現在進んでいる引き上げが全て完了するのは2030年ですから、5年後です。

 将来平均寿命が90歳とか100歳という時代が来れば再び引き上げが検討されるでしょうが、その時期は少なくともこれから10年や20年の内に来ることはないでしょう。今の現役世代の多くの人たちにとっては支給開始年齢が65歳というのはほぼ既定の事実と考えて良いと思います。

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受給開始時期を遅らせると国に有利?

 また、受給開始時期を遅らせた方が国にとっては有利になるというのも間違いです。65歳から70歳まで受給開始を遅らせる場合、1カ月ごとに0・7%ずつ支給額が増えます。5年間遅らせると42%増えることになるのです。これがもし受給開始を遅らせても支給額が変わらないのなら、国が有利になるというのもわかりますが、遅らせた分だけ支給額は増えますし、逆に「国に早くたくさん払わせてやろう!」と思って60歳から受給を開始しても1カ月につき0・4%ずつ減りますから、5年早めると受取額は24%減ります。

 年金制度の収支というのは数理計算によって決められていますので、結局、受給開始時期は遅らせても早めても財政的には中立になるように設計されているのです。

次の記事に続く 「4割もの人が保険料を払っていないのなら、自分も払わなくてもいいや。何とかなる」年金保険料を払っていなかった人の悲しい末路