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おかしな家族
吉行家は普通の人から見ると、おかしな家族だったと思います。私が生まれる前から、母は美容室で働いていましたから、世話をしてもらった記憶はほとんどありません。家庭のことはお手伝いさん任せで、みなさんが知っているような温もりを知らなかったのです。その影響なのでしょうか。長じてから母と接するのに緊張してしまい、他人様の方が親しみを感じていたくらいです。
そうは言いながら家族の仲は良かった。私も妹も母と同じマンションに住んで、日に何度も行き来をしていました。ところが、それぞれが気ままに生きているものですから、お互いの生活にはほとんど干渉しません。母からの連絡の方法も独特です。用事があるときは、新聞に入っているチラシの裏に「部屋に来て」といったメモが書かれ、ポストに入っているのです。
3人とも大晦日の「紅白歌合戦」が大好きでしたが、一度も一緒の部屋で見たことはありません。年末くらい3人で一緒に過ごせばいいようなものですが、一人で見るのが一番楽しいというのが共通した考えでした。元日になって母から「昨日の森進一は良かったわ」などと感想を聞けば、私や妹が誰それが良かったと答えることが普通だったのです。
