91歳の母との旅

 母は何よりも仕事が好きで、朝から夜まで美容院にいるほうが楽しいと考えているタイプです。それまで、日常生活で一緒に食事をしたり、四方山話をしたこともありません。私は60歳を超えて91歳の母と、メキシコの地で初めて寝食を共にすることになったのです。

 ところが、体を壊したのは私の方でした。母との初めての旅行は、大きなストレスだったようで出発の直前に帯状疱疹を発症していたのです。母にそのことを伝えると「それは大変ね。みんなに言うと心配するから、黙って行きましょう」と、どこ吹く風でした。

目覚めると、ひとりだと気づく 家族が過ごした最期の日々 (文春新書 1525)

阿川 佐和子 ,加賀 乙彦 ,小池 真理子 ,曽野 綾子 ,永田 和宏 ,眉村 卓 ,柳田 邦男 ,吉行 和子

文藝春秋

2026年4月17日 発売

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