「子ども向けミステリ」から「アクション大作」へ
『名探偵コナン』はそのタイトル通り、謎解きミステリーを基礎としている。1990年代、『金田一少年の事件簿』と並んで謎解きミステリマンガの代表格として人気を博したが、主人公が小学生として暮らしているだけあって、『金田一少年の事件簿』に比べて謎解きの強度は緩やかで、子どもでも読めるミステリという位置づけだった。中学生以上の世代では『金田一少年の事件簿』を好む傾向にあったように記憶している。
テレビアニメと劇場版も、その原作のテイストを踏襲していた。劇場版に変化が訪れたのは、2000年代中頃のことだ。舞台が大がかりになっていき、アクションシーンが増加していく。さらに人気キャラクターを多数登場させるオールスター感の強い作品が増え、事件の真相や謎解き要素はありつつも、それ以上に「どう盛り上げるか」に比重が置かれるようになっていった。
この頃のシリーズの興行成績は、おおむね30億円前後で推移していた。同シリーズの大きな特徴は、ファンの卒業が少ないことだ。恋愛要素や人間関係の妙もあって、今後の展開も気になるためか、子どもの頃に触れたまま大人になっても読み続ける読者が多い。そうしてファンの平均年齢層が上がっていくのに合わせて、徐々に作風も変化していった。
2010年代から女性ファンを意識した作風に
とりわけ2010年代に入って静野孔文氏が監督を務めるようになると、アクション映画化の流れが加速していく。これは、従来とは異なるファン層にも訴求する力を蓄えていくことになった。
映画批評家の渡邉大輔氏は、筆者も参加した座談会で次のように語っている。
「昨今の『コナン』人気に関しては、僕自身はあまり私見は持ち合わせていません。ただ、妻も学生たちも好きですね。やはり赤井秀一や安室透のようなキャラクターには、女性ファンが付く。映画の『コナン』は、爆発やアクションシーンがハリウッド映画並みに見応えがあり、女性の中にはハリウッドの実写のアクションや爆発シーンは怖くて見れない人もいるけど、アニメ絵なら大丈夫で、『コナン』でそういうシーンを楽しみたいという需要があると聞きました」(※1)
渡邉氏が指摘する通り、『コナン』シリーズは女性ファンが多い。そして2010年代中頃になると、その層を明確に意識した作風へと舵を切っていく。