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現ユニフォームが「黄金期」のモデルになる日

 ところで、現在のカープのユニフォームはマツダスタジアムが新設された2009年からモデルチェンジしたものであり、今シーズンで10年目を迎える。プロ野球意匠学研究家の綱島理友氏をして、野球のユニフォームのセオリーにのっとっていて今一番格好いいユニフォームだと言わしめる現ユニフォーム(『ベースボールマガジン』2018年別冊新緑号・えのきどいちろう氏との対談「“プリントユニフォーム”の是非を考える」による)。確かに使われる色は白と赤、ラインの濃紺のみというシンプルなデザインだ。この飽きのこないデザインが長期間採用されている大きな理由であろう。

 しかし現ユニフォームの一番の特徴は、ビジター用の赤一色の上着にあると私は考える。1975年にジョー・ルーツ監督が赤ヘルを導入して以降、カープは「赤」をチームカラーとして主張してきた。だが歴代のユニフォームの中でここまで赤の面積が広いのは現行のビジター用をおいて他にない(全身真っ赤の2014年限定「赤道直火」ユニは除く)。現在、マツダスタジアムをはじめ各球場のカープファンが座る観客席は真っ赤に染まっているが、以前はここまで圧の強い赤ではなかったように思う。これは2009年以降、ビジター用のレプリカユニフォームを着る人が増え、ホームゲームにおいてもビジター用ユニの着用率が高くなってきた結果なのだ。つまり現ビジター用ユニフォームは、カープの「赤」を効果的に見せるための装置として機能しているのである。

 このままカープが好成績をおさめていけば、1977~88年モデルを抜いて現ユニフォームが着用最長期間を更新するかも知れない。勝率も1位になるかも知れない。何十年か後に現ユニフォームのデザインを「黄金期のカープのユニフォームだよ」と次世代に語る時代が来るのだろうか。その日を今から少し楽しみにしている。

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1977〜88年モデル以降のユニフォームに全て袖を通した歴史の生き証人・緒方孝市 ©オギリマサホ

※参考文献
綱島理友『日本プロ野球ユニフォーム大図鑑 下』(ベースボール・マガジン社・2013)
スポーツユニフォーム愛好会『カープのうろこ』(文芸社・2014)

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