刑事司法の実情があまりに知られていない

村木 刑事事件の疑いをかけられた方が私を訪ねてこられることがあるんですが、皆さん同じことを言うんですよ。「日本の司法がこんな風になっているとは知らなかった」って。世間の人にもっと刑事司法の実情を知ってもらう努力をしなければ、と思いました。それで、「刑事司法は実は身近な問題なんですよ、特に働く人たちは結構巻き込まれる可能性があるんですよ」という趣旨で本を書くことにしたんです。

©︎鈴木七絵/文藝春秋

 私は、2011年に法務大臣の諮問機関として作られた法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」(以下「特別部会」)の委員を務めたんですが、そこに参加していた他の一般有識者委員だった4人と、委員の役割が終わった後も一緒に勉強会を続けています。そのメンバーと話し合いながら、書き進めました。

法務省は制度を見直す気があるのか

――特別部会は2014年7月に、裁判員裁判対象事件と検察の独自捜査事件で取り調べの全過程の録音録画を行うなどの法改正の要綱をまとめました。それに基づいて刑事訴訟法が改正され、2019年から録音録画が義務づけられています。

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 取り調べの可視化実現は画期的なことでしたが、対象となるのは全事件の3%程度。それも含めて、施行から3年後に見直しをすることになっていましたね。

村木 特別部会の時は、5人とも悩みに悩みました。その結果、たとえ一部の事件であっても、まずは取り調べの録音録画をスタートさせることを優先することにし、3年後の見直しで全面的な可視化につなげられるような仕掛けを入れて、結論に賛成しました。なので、みんなずっと宿題を抱えたような気持ちなんですよ。

©︎鈴木七絵/文藝春秋

 ところが法務省は、3年後の見直しのための「刑事手続きの在り方協議会」は作ったけれど、日程がなかなか入らない、メンバーに市民は入れない、議論をマスコミに公開しない、という状態。本当に腹立たしく、5人で要望書を出したりもしましたが、事態は変わりませんでした。

 そうこうしている間にも、問題は次々に起きる。大阪のプレサンス事件なんて、私が巻き込まれた事件と構図がそっくりです。検察はほとんど何も変わっていないんですね。そのことがなかなか知られていません。