新喜劇に憧れ、お笑い芸人になりたかった幼少期

『つばさ』では、10年ぶりに家に戻ってきた自由奔放な母に振り回されるしっかり者な和菓子屋の娘・つばさをコミカルかつキュートに演じていた。小学生の頃にミュージカル『アニー』を観て、役者の道を志した多部。インタビューによると(※1)、その前は吉本新喜劇に憧れていたそうだが、それも納得である。劇中での寸劇みたいな場面も、絶妙な間合いでこなしていたからだ。新喜劇に慣れ親しんでいるため、コメディセンスに優れているのかもしれない。

 一方で、こういうドタバタ劇は主人公がうるさい・不快などと評価されがちだが、多部は好意的に受け入れられていた印象だ。それは締めるべきところは締め、芝居がコントにならないようにしっかり手綱を握っていたからではないか。

 17年ぶりの朝ドラ帰還にあたって、多部は当時について「つばさという役の感情を一番理解しているのは私だと思っていました。強気な発言だと思われるかもしれませんが、誰よりも自分が一番その役の目線で台本を読んでいるから“自信を持つようにしていた”というのが正しいかもしれません」(※2)と振り返っている。その言葉通り、堂々とした演じっぷりで反響を呼び、人気俳優の仲間入りを果たした。

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朝ドラ『風、薫る』では“実在の人物”に

『風、薫る』で演じる大山捨松は実在した歴史上の人物で、そのまま名前も使用されている。津田梅子らとともに岩倉使節団に随行した女子留学生の一人と聞けば、多くの人は理解できるのではないだろうか。会津藩家老の娘として、賊軍の汚名をそそぐためにわずか11歳でアメリカに渡った。その経験をもとに、女子教育の発展に寄与したことでも知られる。

(左から)高嶋政宏、多部未華子、見上愛(『風、薫る』公式Instagramより)

 そんな捨松が「鹿鳴館の華」と呼ばれていたのは有名な話だ。アメリカで様々な学問を修め、看護婦の免許を取得して帰国するも、女性であるがゆえに活躍の場を得られなかった捨松は、18歳年上の陸軍卿・巌と結婚。鹿鳴館で社交界デビューを果たし、高い語学力と教養を活かして巌の外交を支えた。いわば、トップクラスのセレブ妻であり、周囲からは憧れの眼差しを向けられる一方で妬みや嫉みの対象にされることもあったようだ。