2015年当時の今とは異なる状況

だが、この頃(2015年当時)、性別違和とトランスジェンダーは区別されていた。トランスとは超えるという意味である。反対側の性へ超えていった人、それによって満足やプライドを得ている人をトランスジェンダーと呼んでいた。そういう意味では、光は性別違和で苦しんでいたので、この当時でいうトランスジェンダーではない。

なお、この頃はまだLGBT(Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender)という言葉は一般的ではなかったし、私も聞いたことがなかった。2015年に東京都渋谷区で「同性パートナーシップ条例」が作られてからしばらくすると、LGBTという名称が新聞などで少しずつ使われるようになる。つまり、光が中学校生活をするようになってから、私はLGBTという名称を知るようになった。LGBTQ(Queer/Questioning)という呼称はさらにそのあとに生まれてくる。

松永 正訓(まつなが・ただし)
医師
1961年、東京都生まれ。87年、千葉大学医学部を卒業し、小児外科医となる。日本小児外科学会・会長特別表彰など受賞歴多数。2006年より、「松永クリニック小児科・小児外科」院長。13年、『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』(小学館)で第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。19年、『発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年』(中央公論新社)で第8回日本医学ジャーナリスト協会賞・大賞を受賞。著書に『小児がん外科医 君たちが教えてくれたこと』(中公文庫)、『呼吸器の子』(現代書館)、『いのちは輝く わが子の障害を受け入れるとき』(中央公論新社)、『どんじり医』(CCCメディアハウス)などがある。
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