卵巣がんが増加している。静かに始まり、気付けばステージIIIやIVまで進行している恐ろしい病気だ。それでも、有効な治療法はある。手術法と薬の進歩で生存率は上がってきたという。その兆候と症状、治療法を知ろう。

40代で急増し、60代でピークを迎える卵巣がん

「『洋服のウエストがきつくなった。更年期で脂肪がついたのかしら――』。そう思い込み、婦人科を受診したときには、ステージの上がった進行がんだったというのは卵巣がんでよくあるケースです。自覚症状がほぼなく、有効な検診もないので早期発見が難しいのが卵巣がんのやっかいなところです」

 こう嘆息するのは、千葉大学医学部附属病院婦人科で診療講師を務める(にしき)()恭子医師。婦人科腫瘍専門医で構成される卵巣がん手術専門チームの一員として、卵巣がんの治療と研究にあたっている。

千葉大学医学部附属病院婦人科診療講師 錦見恭子

 初期段階における自覚症状の少なさから、「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」と言われる卵巣がん。発見された段階で進行がんになっている人が6割という恐ろしい病気だ。罹患者数は年1.3万人で、年々増加の一途だ。40代で急増し、60代でピークを迎える。なぜ卵巣がんが増えているのか。

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「発症のメカニズムは十分に解明されていませんが、排卵回数の多さがひとつの要因と言われています。卵巣がんは、卵巣の表面にできる上皮性腫瘍が約9割です。卵巣から卵子が飛び出す排卵のたびに卵巣の表面に傷がつき、修復されるという過程が繰り返されます。この過程が多いほど卵巣がんの発症リスクが高くなると言えます。排卵回数が多くなる要因として『出産経験がない・少ない』『初潮年齢の早期化』『閉経が遅い』といったことが挙げられます。ライフスタイルの変化でこれらに該当する女性が増えたことが罹患者数増の背景にあります。また、近年は、卵巣がんの中でも悪性度が高い高異型度漿液性がんは、卵管の先端である卵管采から発生するという説が定説になってきています」