「誰かが一歩踏み出すきっかけや参考に」難聴当事者として発信する理由

――今後の目標を教えてください。

舩橋 まずは気象予報士として、もっともっと成長したいです。もっと知識をつけて、予報の技術を磨きたい。皆さんに分かりやすく的確に情報を伝えられるようになりたい。

 これまで情報の受け手としての困った経験が人一倍あるので、難聴の方しかり、子どもや高齢の方、外国の方でも分かるような寄り添う伝え方ができたらなと思います。

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 また難聴についても発信していきたいです。難聴といっても、聞こえ方も環境も人それぞれで、悩みは一人ひとり違う。だからこそ「こういう人もいるんだ」という1つの例として私の存在を知ってもらえれば。誰かが一歩踏み出すきっかけや参考になることが、発信を続ける意義だと考えています。

 

ようやく「この耳だから今の自分がある」と思えるようになった

――最後に同じように難聴を抱えている方に伝えたいことはありますか。

舩橋 私自身、耳のことがあったからすごく悩んだ人生でした。でも耳のことで悩み、それを乗り越えてきた経験を発信していく中で、いただいた応援の声がすごく支えになっています。ようやく「この耳だから今の自分がある」と本心で思えるようになりました。

 今でも難聴だからこそ直面する悩みはあります。イントネーションがうまくいかないとか、ちょっとした挨拶やひとことを聞き取れなくて、相手に言い直させてしまったり。

 会話やコミュニケーションの中で、「あぁ、今のがちゃんと聞き取れる耳だったらなぁ」と思うことは日常茶飯事です。「耳が聞こえていたら、もっと自然にできたのにな」って思う瞬間は、今も正直あります。

 それでも、この耳だからこそ気づけた優しさもあります。マスクをずらして口元が見えるように話してくれたり、私の聞こえやすい側に自然と立ってくれたり。周囲の人のさりげない優しさに気づけるのは、この耳とともに生きてきたからだと思っています。

 落ち込んだり、つまずいたり、悩んだりすることは、きっとみなさんにもあると思います。でもいつか、この耳とも、自分なりのちょうどいい距離感で付き合っていける時が来るのかもしれません。

 完全に受け入れることはできなくても、「今日はこのくらいの距離感で向き合えばいいかな」と思える日が来る気がするんです。そうなるためには、いろいろな経験をゆっくり積み重ねていくことが大事なんじゃないかなと思っています。

 

撮影=深野未季/文藝春秋

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